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古の路@夜叉神峠~深沢下降点 2017.11.19(日)



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主に積雪期の北岳登山で利用される池山吊尾根へのアプローチは、あるき沢橋からの義盛新道が現在唯一のルートである。
しかし狭い等高線を無理やり切り裂くように付けられたこの変則的なルートには、強い違和感を感じる方もいることだろう。
荒川、もしくは野呂川へと末端を落とす吊尾根の美しい地形図を眺めれば、その思いは益々強くなるはずだ。

それもそのはず。
違和感への答えは古の地図に求めることができる。

かつて吊尾根の末端には、尾根を忠実に辿る荒川小屋を起点としたルートがあった。
夏山シーズンには、池山小屋周辺にテント村ができるほど盛況であった人気の登山道が廃道となったのは、奈良田、芦安からの県道が通されて、広河原が整備されたからに他ならない。





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白岩岳を計画していたが、強すぎる寒気が入ることがわかりこれを取り止めた。

南アバスがシーズンを終え、暇を持て余しているであろうK氏へ声をかけると、予想通りの答えが返ってきた。
K氏を崇拝して止まない変態高校生のSくんは大喜びだ。

ご自宅へ泊めさせて頂くことになり庭でタバコを吸っていると、一台の車がやってきた。
現れたのはK氏の弟さんである風間深志さんだ。
世界的にも有名な方なので、ググればすぐにヒットする。
ちなみに氏の御子息は風間晋之介さん。
最近では『やすらぎの刻〜道』というドラマに出演されている俳優さんなので御存知の方も多いことだろう。

とても熱い方で、情熱的な話に刺激を受けた。
人生を楽しんでいる大人は実に格好いいなと改めて思った。



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目覚ましで起こされた。
寝室から外へ目をやると、朝を待つ白峰三山の姿があった。

なんとも羨ましい額縁に朝から嫉妬した。



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『深沢下降点を眺めに行こう。』
息子くんを除き、この一言で地形が浮かぶのが今回のメンバーだ。
だからこんな意見が出る。

単に林道をピストンするだけではつまらない。
ならば、夜叉神峠から夜叉神峠西口登山口を経由して林道に降りてはどうかとナイスなアイデアが飛び出した。



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発言者はビジュアルだけが無駄に良いFちゃんだ。
流石は『南アルプス愛好家』の肩書きで活躍している妖怪才女である。



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ツンと冷えた美しい空気の中を上げて行く。



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この山域そのものが職場であるFちゃんは、実に身軽な出で立ちだった。
今ではすっかり慣れてしまったが、足元が長靴なのには驚いた。
長靴や足袋などの柔らかいソールで歩くことができるのは、きちんとしたアーチが足裏にある証拠である。

つまりは本物だということだ。



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自称寡黙なK氏があらぬ方角から話題の引出しを開けては饒舌となる。
夢中になるとその都度行程が止まるもんだから一向に進まない。

けれど、今日はこれで良い。



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夜叉神峠を目指しジグザグに上げる。
休憩のたびにK氏の話で皆が笑顔になる。

いいな、この時間。



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峠に登りきる2分程手前で窓が開いた。
上に行けばもっと良い展望のあることはわかっていたが、Fちゃんと二人、足を止めてカメラに収めた。



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『パパ。やばいよ、この景色!』
興奮した息子くんの声に迎えられ、やや遅れて夜叉神峠に到着となる。



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雪煙を上げた白峰三山の堂々たる展望をバックに記念撮影。

『白岩岳行けたんじゃね?』
ま、いっか。



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私は大唐松山と、右手の滝ノ沢頭山にねちっこい視線を這わせていた。
いつか登りたいと願ったこの日の想いは、約半年後に実現することができた。

そんな話はいつになったら書けるだろうか。



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Fちゃんの妖力魅力にすっかりやられていたSくんが微笑んでいる。
大学生になった今でも、この一枚を5万円で買ってくれるのだろうか。



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今日はあちらへは進まない。
青空に映える大崖頭山に踵を返し、元来た路を高谷山方向へと戻る。



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そして林道を目指して妙なところから降りて行く。



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足場は悪く、日陰の沢にはツララがあった。
危険箇所を通過する度にSくんが息子くんをサポートしてくれた。



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熊に破壊された道標。
年間どれほどの人が歩くのだろうか。



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あ、笊だ。



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この山行の翌週、調査で入ったのだという辻山周辺の写真をFちゃんが送ってきてくれた。
山肌を一面黄色に染め上げたカラ松がとても美しい一枚だった。

私もいつか同じものを見てみたい。
この辺りの植生は抜群に良い。



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一足先に林道に降り立った。



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シーズンを終えた静かな林道をわいわいと歩く。



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マイカー規制の無かった頃は、いつもこの場所へ車を停めて撮影を楽しんでいた。



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喧騒の夏と静寂の初冬。
山は間もなく白銀に眠る。



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みんな何を話しているんだろう。

『袖振り合うも多生の縁』

好きな言葉が頭に浮かんだ。



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冷たく強い向かい風が吹いていたため、岩影に隠れてパンを食べた。



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今も歩かれている鷲住山経由のアプローチ。



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そして、バス停に名前を残すだけとなった深沢下降点からは、吊尾根末端の一つが野呂川へと落ちていた。
強かった古の岳人達へ思いを馳せシャッターを切る。



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さあ、帰ろうか。



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かつては岩盤の外側にも道があった。
注意深く眺めると、当時利用されていたレールが数ヵ所でぶら下がっている。



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芦安と長谷を結ぶ総延長約56.98キロ。
かつて南アルプススーパー林道と呼ばれた県営林道南アルプス線は、1980年に全線が開通となった。



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捨てられた昔の道。
まだ状態の良かった頃、K氏はトラバースの先まで歩いたことがあるのだそうだ。



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どれほどの難工事だったのであろうか。
かつて自然破壊の象徴とされた本工事の恩恵を受け、現在我々は山に登ることができている。
殉職慰霊碑を見るたびに頭が下がる。

そしていま。
リニアが早川町~大鹿村を貫くべく周囲の景観を日々変貌させている。
静かだった山間の道を砂ぼこりを上げた大型車両が往来し、美しかった山野を破壊し残土を積み上げる。

一度破壊された自然は決して元へは戻らない。
利便性の追求により、我々が失うものは計り知れない。
いつの日か、リニアに感謝する日が来るのだろうか。



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1955年完成の夜叉神トンネル。
小さな扉を開けて脱出する。



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桧尾峠。
忘れ去られた古の峠道がここにも眠る。



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季節が移り、再び身をくねらすようにバスが林道を走る頃、この日のことを思い出すのだろう。



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関所は妖怪パワーで顔パス。



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おつかれさま。



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ふと名を呼ばれ振り返ると懐かしい顔があった。

山は人を繋げてくれる。
彼との物語りもまたいずれ。



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いつも素通りするだけだった南アルプス芦安山岳館に立ち寄った。
私は嬉しくて仕方がない。



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素晴らしい展示内容だった。
貴重な蔵書なども数多く、一週間くらい引きこもりたいと今でも思っている。



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Fちゃんの友人が働いており、巨大な芦安の地図をお土産に頂いた。
今は自宅の壁に貼り尾根を追っては、この日の明るい山と仲間達の笑顔を思い出している。

建物を出ると白いものが舞っていた。
『風花だ。』と呟いたSくんの瞳がとても綺麗だったことを良く覚えている。


【近況報告】

生存確認のメールやコメント等をお送り下さった方、ひとまず元気にやってます。
こんな、遅筆ブログ主を気にかけてくださり、大変ありがとうございます。

平日は都会という名のごみ溜めで無気力病に殺されて、週末の山で復活するというサイクルの中で生きています。
2018年、家で週末を過ごしたのは4日間のみ。
あとは全部山でした。
2019年も似たようなペースです。

しかし山との関わり方はすっかり変わり、週末の半分は鳳凰小屋をお手伝い、もう半分は仲間達に助けられながら好きな山を歩いています。

これからも、時々覗いて頂ければ嬉しいです。
お返事もろくに書けてはおりませんが、頂戴したコメントは感謝と共に大きな励みとなっています。

数年前に撮影された、実は旬でもなんでもない山雑誌の表紙を眺めるつもりで、これからもお付き合い頂ければ幸いです。



おしまい。

今回も最後までお読み頂きまして、大変ありがとうございました。

↓励みになりますので、よろしかったら『ぽち』っとお願い致します(^^)/


by yama-nobori | 2019-08-27 22:26 | 登山 2017 | Comments(2)
Commented by kkai0318 at 2019-08-28 23:43
初めまして。いつも素晴らしいなと読んでいます。
このルート、とても懐かしいと興奮混じりに拝見しました。
歩いて伊那まで抜けたこと、そのまま日本海まで歩いたことを思い出します。

この場所の空気まで感じられる写真、なんだかとても嬉しくなりました。
ありがとうございます。
Commented by ねも at 2019-10-04 10:46 x
お久しぶりです。お元気そうで何より。
面白いレポートです。息子さんもお変わりなく素晴らしい!
先月15日、赤石岳で榎田さんたちに会いましたが、泊まらなかったので、ゆたかさん話題するの忘れました(笑) 何だか結構な人だかりで、いろんなTシャツ売ってました。私も1枚。山中同じようなTシャツの登山者に何人も会いました。
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