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合縁奇縁①@笊ヶ岳(偃松尾大黒尾根)2017.10.07(土)~08(日)



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「偃松尾大黒尾根」と呼ばれる尾根に、笊ヶ岳への古い登山道が眠っている。

早川町の白石集落から大黒山と偃松尾山を経て笊ヶ岳へと至る偃松尾大黒尾根は、南に位置するランカン尾根と対をなし、大武刀尾根と保川を挟みながら長大な尾根を東へと落としている。
廃道となって久しい現在、ここを訪れる登山者はさほど多くはない。




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偃松尾山(2545m)には特徴的なザレ場がある。
※写真は笊ヶ岳からの偃松尾大黒尾根。



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笊ヶ岳の右で鋭利な尖塔を空に向けているため、甲府盆地からの山座同定は容易である。



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深田久弥が冬季に挑んで敗退し、それでも百名山の選考に最後まで頭を悩ませ続けた山が笊ヶ岳だ。
氏が登頂に成功していたら、百名山に名を連ねてしまっていたのでは無いだろうか。
山行途中で逃げ出したのだという歩荷には、感謝しかない。

※上河内岳からの笊ヶ岳(右)と偃松尾山(左)




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近所の変態T氏と『秋になったら小渋川をやろう。』と前々からの計画があった。
しかし決行の数日前にまとまった雨が降り、増水を恐れてこれを取り止めた。

「今回の笊ヶ岳は大黒山を通るんだよ。」と伝えると、「どこすか、それ?」との返答があり、この代替案が俄然楽しみになった。

予備日の金曜日は移動日とした。
昼過ぎにT氏をピックアップ、近所のスーパーで買い物を済ませた後、薄暗くなる頃に早川町へ入った。



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この頃、T氏から他言無用で願いますと、大きな山行計画の話を聞かされていた。

あまりにも次元の違いすぎるその計画に、無知な私は質問すら浮かばない。
ただ「無事に帰ってこいよ」、それだけを思っていた。

ついつい買いすぎてしまう、お総菜テント宴会がこの日も楽しかった。




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白石トンネル手前、万年橋近くの作業場に一般駐車場がある。
やたらと虫が多く、足元は草だらけではあるが、とても有難い存在だ。




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出発準備を整えていると一台の車が近づいてきた。

工事関係者に怒られるのかと身構えていると、現れたのは友人のHさんご夫婦だった。
昨夜私がFBに投稿した記事を見て、近くの妙な山に向かう途中で立ち寄ってくれたのだ

05:10、Hさん達に声援をもらい出発する。
久しぶりの再会が嬉しかった



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ゲートをすり抜け林道を進む。
最初の目標は「大黒山」(1990m)、標高差は約1550mである。



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保川に沿って緩い傾斜で林道を進む。



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05:50、工事箇所が現れ迂回路の指示に従った。



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山に入るといくつかの作業道に騙され道迷いを起こした。
結局、勘で進んだ方向に正解があった。



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ほどなくして、今にも崩落してしまいそうな吊橋が現れる。



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T氏が一歩足を乗せると橋は大きく傾き、パラパラと苔が川へと落ちていく。
ゾッとなって川床へ降りた。



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うん、水量は少ないね。



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危なげなくこれを渡渉する。



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この先、這松尾の西まで水場は無い。
4L程取水するとザックがずっしりと重たくなった。



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取り付きには道標があって驚いた。

深田久弥一行は、保川沿いに詰めたのだと聞いたことがある。
このルートだったのだろうか。



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いきなりの急登だった。
足元がかなり悪く、ガラガラと落石を起こす。



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湿ったトラバースでは重荷で体をふられ、一度スリップしてしまい肝を冷やした。



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踏み跡が錯綜しており、古いリボンや「山火事注意」などの比較的新しい看板があった。



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06:50、山の神。
手を合わせ先へ進む。



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山の神からは更に足元が悪くなる。

尾根通しで上げるのが正解だったのだろう。
尾根を避けようと巻きながら進むと、足場の狭い高度感のある通過点が現れ悪態をついた



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広尾根に乗りほっと一息。
梢の先に人知れず落ちる滝を見た。



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07:30、標高約950mで林業の作業場跡に出た。



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残留機械と共に多くの酒瓶が転がっている。
山で見るゴミは決して気持ちの良いものでは無いが、この手の残留物は趣を感じることができるから不思議なものだ。

真新しいクマの糞が無数に落ちていた。



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作業場跡には展望があった。
遠くに「小笊」を見つけたT氏が嬉しそうにレンズを向ける。
ランカン尾根には、我々の想い出が詰まっている。



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一休みして歩き出す。
不明瞭ながらも尾根には道型があった。



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斜度は徐々に強くなり、倒木を避けながら短い藪を何度か抜ける。



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「だるいっすね。」とT氏がぼやく。



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標高が1600mを過ぎる頃、ようやく尾根が寝た。



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標高1850m付近に湧水があり、これまでに飲んだ分だけの水を採った。
流れの下には大きなヌタ場があった。



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やがて平地が現れる。
周囲は苔むしており、足元はふかふかだ。



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この辺りにあるはずだ。
三重山稜を見回すと、最も北側でそれを見つけた。



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11:40、三等三角点「大黒山」(1921.9m)。



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ひっそりと時間に埋もれている。
なんて静かな三角点なのだろうか。



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「二度と訪れることはないのかもしれない。」

山に登るとそんなことを良く思う。
廃道上のピークであれば尚更のことだろう。



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T氏と二人、「熊小屋」同様、なかなか立ち去ることのできない三角点だった。



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その後、三角点から僅かに進んだところで「大黒山」(1990m)の頂上を通過する。



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ここから先は稜線歩きとなる。
次に目指す「偃松尾山」までの標高差は約550m、距離は気が遠くなる程にまだ長い。



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山梨県特有の「恩賜林」を示す古い標石をいくつか見た。



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大黒山から少し先の露岩地帯には展望がある。
偃松尾山と笊ヶ岳が見えるはずであったが、残念ながらガスが湧き始めてしまっており、願いは叶わなかった。



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尾根は変化に富んでいる。
小さなアップダウンが連続するようになると体力を奪われた。



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行く手を阻む大岩は、互いに距離を保ち左から巻いた。
立ち枯れの木が多く、手掛かりに悩まされなから上げて行く。



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二人とも良く足が出た。
そのため、偃松尾山を越えた先にある水場への下降点を幕営地の目標とした。



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P2253の少し手前で苔むした標石を見た。



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P2253の通過を地形図で確認。



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P2253からは僅かに下げ、そして登り返す。
この辺りから徐々に藪が増え始め、思うように距離が稼げなくなる。



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煩い石楠花が混ざり始めると、いよいよ偃松尾山への急登が始まった。



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時に跨ぎ、時に押しのけながら倒木帯を抜ける。



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地形図には無い崩落地の際を進むと、空が突然明るくなった。



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植生が変わったのだ。



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間もなく森林限界だ。
ハイマツの切れ目を縫うように進む。



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しかしその密度が濃くなると避けることが難しくなり強引に突破することを決めた。
バキバキと音をたて、方向感覚の無いままハイマツの海を泳ぐ。



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すると、、、先行していたはずのT氏の声がやや後ろから聞こえてきた。

え?
もう山頂?



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声の方向に漕ぎ出すと、突然ハイマツが薄くなり足元に転がる山頂標を発見した。
17:20、「偃松尾山」(2,545m)登頂。



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流石だなぁ、T氏。

予定通り先へ進もうかとも考えたが、水は十分に残っていた。
手元の明るい内に幕を張ろう。

生木割山(2539.3m)が間近に見える、この山頂での幕営を決めた。



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手早く設営しテント越しに乾杯。
焚き火はおこさなかった。

明日はガスの奥にあるはずの秀峰達を見ることができるだろうか。
前回のランカン尾根では、同じように期待と不安の一夜を過ごし、結局何も見ることができなかった。

気温は高く、風の穏やかな静かな夜だった。
鹿の声を遠く聞きながら地図を眺め、等高線を辿り一日を振り返る。
稼いだ標高は約2100m。
焦ることも無く、深く山を楽しむことのできた納得のいく一日だった。

静かな山は良い。
つくづくそう思いながらシュラフに潜り込むと、あっという間に落ちていた。


第二部の記事へはこちらからどうぞ。

今回も最後までお読み頂きまして、大変ありがとうございました。

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by yama-nobori | 2019-02-17 22:19 | 登山 2017 | Comments(0)
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