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【ダイジェスト版】自然の猛威@茶臼岳~上河内岳(↑鳥小屋尾根↓茶臼岳登山道)2019.01.12(土)~14(月)



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赤石岳~聖岳の記事の途中ですが、旬ネタをお届けしたくなり久しぶりのダイジェスト版です。




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2018年10月、南アルプスは台風24号により甚大な被害を受けた。
中でも、地形が変わってしまうほどの土石流に見舞われた茶臼岳登山道では、3つの吊橋が消失し、登山道の崩落を伴う大変深刻なものとなった。



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沼平から東俣林道を徒歩で進む。
未だ復旧は終わっておらず、到るところで工事が続く。



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登りで使用したのは鳥小屋尾根。
昭和32年の静岡国体の山岳競技の為に切り開かれたコースであり現在は廃道である。
非常にわかりやすいバリエーションであるため、その記録は多い。

しかし、積雪期の記録となるとたやすく見つけることはできないだろう。



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目印となる鉄塔から、尾根は急勾配で伸びている。
無論、地形図を読めることは前提ではあるが、マーキング豊富であり、道迷いの心配はまずないだろうと思われる。



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1つ目のガレを過ぎ、しばらく急登を詰めた後に現れる二重山稜の先に「畑薙山」(1836m)はある。
標高1700mからは雪が見られるようになった。



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畑薙山からは一度下げ、途中で北西尾根へと乗り換える。



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その後は再び強い登りとなり、2072の手前でガレに出る。



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ガレではひっきり無しに崩落が起きており、縁を歩くことなどとてもできない。
樹林帯側をトラバースしながら、これを回避する。

軽荷の無積雪期ならばなんてことの無いこの通過点で、積雪期故の恐怖を味わった。
冬装備の詰まったザックは重く、凍結した中途半端な量の雪と木の根が滑落を誘うのである。



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ガレをやり過ごし急登にあえぎ続けているとラッセルが徐々に厳しくなってきた。
南岸低気圧の接近に伴い雪が降り始め、標高2430mで初日を終えた。



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2日目は無風快晴。
気温は-10℃程度までしか下がらず温かい朝を迎えた。

急登のラッセルを再開すると、程なくして展望が開けた。
11月の終わりに登ったばかりの布引山~笊ヶ岳が美しいシルエットを引いていた。



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森林限界が近づくと積雪量が一気に増える。



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茶臼岳の頂が手に届きそうな距離まで登ってくると、腰~胸ラッセルとなった。



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ハードな状況とは裏腹に、その場所はただただ美しい。
数時間後には消えてしまうのであろう真っ白な珊瑚へ繰り返しレンズを向け呼吸を整えた。



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茶臼岳登頂。
山に空疎な美辞麗句は不要である。

往路で使用した鳥小屋尾根には、顕著な台風の爪痕は見受けられなかった。



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次に上河内岳を目指す。
我々二人だけのトレースが、白無垢の山肌に伸びて行く。



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やがて結果はついてくる。

あの日一歩一歩刻んだ努力の跡は、今もまだ稜線に残っているのだろうか。
今シーズン、ここを訪れるパーティーはほぼ無いのだろう。



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登頂を果たした上河内岳では、畏怖の念を抱かずにはいられない白銀の秀峰達の姿に釘付けとなった。
下山時に立ち寄った亀甲状土の美しさは、生涯忘れることは無い。



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この場所から眺めるピラミダルな上河内岳がたまらなく好きだ。
寝転んで見上げた空には紺碧があった。



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茶臼岳登山道で下山する。
台風から数ヵ月経った今もなお、深い爪痕を残したままだという登山道をようやく見ることができる。
疲れた体とは裏腹に心は熱かった。



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積雪量は鳥小屋尾根のそれより多く、大きく体力を削られ続けた。



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暗くなる前に到着することのできた横窪沢小屋で、長かった2日目の行程を終えた。
雪が多い以外に、ここまでの行程に特筆すべき障害は無かった。



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3日目の朝、それはすぐに現れた。
小屋から横窪峠へと上げる斜面につけられていた登山道が大崩落していたのである。



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写真では伝わらないだろう。

雪の無い脆い壁を登るためアイゼンとピッケルを使用した。
冬装備は重く、2本の前爪が外れれば確実に崖下へと叩きつけられる。
ネガティブなイメージを払拭すべく努力したが、それは容易なことでは無かった。

今後積雪量が増えた際には、横窪沢をやや下り、尾根に乗り直すルートを検討したほうが賢明だと思われる。
ここから先は、本来の地形を熟知した経験豊富なパートナーと進むべきルートである。



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横窪峠からウソッコ小屋の直上までは、以前の登山道となんら変わりは無かった。
長い鉄梯子で降りて行く。



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すると、本来在るべき場所に第5号橋が見当たらない。
残されていたのはコンクリートの土台だけだった。



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崩落前の第5号橋の姿である。
これ程までの高さまで、水が出たのか。



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河原まで下り渡渉した。
水量が増えれば、かなり困難な通過点となるだろう。
その後ウソッコ小屋へと向かう途中で橋の残骸を発見した。



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ウソッコ小屋は別棟のトイレも含めて無傷である。


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その後は各所で崩落を目にするようになる。



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第4号橋健在。



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その先にある梯子の下は大きく崩落。
ザイルが設置されており、これには大いに助けられた。



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その後現れた光景に我が目を疑った。
地形が変わるほどに土砂が堆積しており、美しかった上河内沢はその面影すら無かったのである。



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第3号橋崩壊。
架けられていた橋の高さまで土砂が埋めている。



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在りし日の第3号橋は清流上に架かる趣ある橋だったのだ。



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第2号橋健在。



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第1号橋崩壊。
支流の橋は残ったが、本流のそれは全て落ちていた。



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在りし日の第1号橋。
この後は広い河原と化した、かつて登山道と呼ばれたその場所を進んでいった。



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ヤレヤレ峠へ向かう登山道は問題無いと聞いている。
ここまで何度、渡渉を繰り返したのだろうか。



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峠へ向かうのが面倒になり、そのまま沢を進み畑薙湖を目指して何度か渡渉した。



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畑薙湖にはほとんど水は無く、僅か一歩の渡渉を最後にこの充実した山行を終えた。

大好きな山域に深い爪痕を残した自然の猛威。
地形を巧みに活かして登山道をつけた人間の叡知も、巨大な力には抗うことができなかった。
もう元の姿を見ることはできないのだと思うと残念に思う。
しかしながら、未だ残されたものは数多く、古い地図はまた書き換えれば良い。

下山後、聖平小屋のスタッフに話を聞くことができたので書いておく。

・シーズン前を目標に仮設の登山道を作る。
・茶臼小屋は営業する方向で検討中である。

2019年、茶臼岳登山道は新しい歴史を刻み始める。



今回も最後までお読み頂きまして、大変ありがとうございました。

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by yama-nobori | 2019-01-18 20:44 | 登山 2019 | Comments(1)
Commented by ねも at 2019-01-27 23:34 x
渾身の、そして衝撃のレポートですね。いつもふざけたコメントしてましたが、今回は真剣に読みました。
うちの大学でも長時間停電したり木がたくさん倒れていましたが、山中はもっと大変だったのですね。この道は何度か登っていますが、全く別の道にみえます。この夏は歩けるのでしょうか!?

ところで厳冬期に、この付近に立ち入るのはゆたかさんくらいでは? 岳人魂に脱帽です。
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