斜度はやや強いが、登るにつれて美しさを増す森の健全さが今日も優しい。 梢の先にオベリスクを見つけてしまうと、この先に待つ風景への想いが否応なしに心を逸らせる。 ペースが上がる。 程なくすると、これまで感じる事の無かった風が頬をなでた。 今回も見えるかな。 うわぁ~。 07:10、白砂の稜線に立つと、期待通りの大きさで北岳が出迎えてくれた。 前回は雪で真っ白だったけれど、緑の北岳も素晴らしいだろ? 冬季の記事へはこちらからどうぞ。 観音岳へ向かう。 そして少し進んでは振り返る。 白砂の稜線が私達の足を何度も止めた。 山の秋は早い。 花期を終えたタカネビランジが秋風に揺れている。 甘酸っぱい山の恵みが口一杯に広がると、夏の終わりが少し切なくなった。 この稜線を息子くんと歩く日がようやく訪れた。 私は嬉しくて幾度となくシャッターを切る。 秋風の薫るなか、質素な鳳凰小屋の弁当を食べた。 これほど贅沢な朝食があるだろうか。 仲間のところへ帰ろうか。 この古木のファンは多く、無論私もその一人だ。 あの日この木にもたれて地蔵岳へ行くことができるのか自問自答していると、テンが雷鳥の雛を咥えて藪に逃げ込むのを見た。 供養のつもりでお地蔵さんに手を合わせたあの日からもうすぐ30年…。 助けてあげたかったな。 微妙なアップダウンに口数を減らしていると、ぴょこぴょこと歩く 足元を見ると、なんと裸足。 真偽のほどは定かではないが、ドンドコからこの状態で登ってきたんだそうだ。 11:20、地蔵岳。 3度目の登頂だね、おめでとう。 稜線を離れると、夏と秋の間を揺れる花盛りのタカネビランジが見送ってくれた。 12:05、鳳凰小屋到着。 お疲れさま。 これで近道と鳳凰三山の登山道の様子、タカネビランジの開花情報をお客さんに教えてあげられるね。 お? Yちゃん…なにそれ!? わあっ! ヤマネじゃん! 驚くほどに人懐っこいヤマネだった。 特にYちゃんがお気に入りらしく、彼女の体から離れようとしない。 息子くんはちょこまかと動き回るか弱い生き物におっかなびっくり。 Yちゃんはヤマネのお母さんだね。 嵐の前の静けさ。 このあと続々と到着する登山者の対応に追われ、鳳凰小屋は戦場と化した。 自分の足と目で覚えた情報をイキイキと語る息子くん。 うん、来年の小屋番デビューは大丈夫かな? 私も売店係りや弁当作り、シラヒゲソウなどの珍しい花を紹介してお手伝い。 当ブログを読んでくださっているという奇特な方からもお声掛けを頂き照れました。 昨日覚えたお代わり係りを頑張る息子くん。 仲間やお客さん達に誉められて嬉しそうに働く姿に一安心。 家だと何にもしないのにね。 常連Cさんは今夜も天体望遠鏡を取り出して、お客さん達の人気者。 みなさんお疲れさまでした。 食事中も私達の側から離れようとしないヤマネくん。 踏まれないようにね… 同じ釜の飯を食うって、こういうことを言うんだろうね。 普段は食の細い息子くんが二回もお代わりしてました。 片付けを終えて談話室へ。 ヤマネは歩き回りすぎて疲れたのか、手の中でうとうと… 息子くんもうとうとし始めて、早々に布団の中へ…。 布団畳み、掃き掃除に拭き掃除、テンバの見回りとトイレ掃除。 朝から目一杯働いて食べる、少し遅い朝御飯の美味いこと美味いこと。 下山はAくんのお友達御夫婦と一緒することに。 山経験のほとんどないご夫婦でしたが、Aくんに会いたいがために頑張って登ってきました。 たいしたもんだなぁ。 今回もお世話になりました。 また遊びにきますね! 08:40、下山開始。 ばいばい! おつかれさまでした。 周りの皆に良くしてもらい、すっかりその気になった息子くん。 高校入試の面談では、『将来は山小屋で働きたい。』と答え、それはどんなところなのかと逆に質問攻めに合いました。 本記事の2017年はまだ『お手伝い』。 できる範囲でのお手伝いは実に気楽で楽しかった。 2018年、私と息子くんの夏山シーズンはこの鳳凰小屋に捧げられました。 待っていたのはマジな『仕事』。 肉体的精神的に追い込まれて行く中年ハイカーと息子くんの奮闘記はまたいつの日か…
by yama-nobori
| 2018-12-10 20:42
| 登山 2017
|
Comments(1)
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by
ねも
at 2018-12-13 22:51
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お天気に恵まれ、父子とも楽しそうですね。私は南御室小屋が好きで、2回泊まっています。
鳳凰三山は何回か歩いています。直近は3年前の7月、比較的素人っぽい人たちを案内したら、梅雨の晴れ間の大展望で、とても喜んでもらえました。 10年以上前ですが、アサヨ峰から縦走したこともあります。まだ早川尾根小屋が営業していました。 たまには「読んだよ!」の一言を(笑)
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