失われた楽園①@草津白根山 2017.07.22(土)~23(日)



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注意)2017年の山行記録です。

草津白根山(くさつしらねさん)は、群馬県吾妻郡草津町と嬬恋村にまたがる標高2,171mの火山である。

2017年6月7日、噴火警戒レベルが2から1へと引下げられ、これにより2014年から立ち入り禁止であった湯釜に加え、本白根山遊歩道の最高地点(2,150m)まで登ることが可能となった。
しかし2018年1月23日午前10時2分頃、監視対象外であった無警戒の鏡池北火口から、直前まで目立った予兆もないままで本白根山が突然噴火した。

現在は、従来の監視対象であった白根山(湯釜)に加え、本白根山火口の二つの山にそれぞれ規制レベルが設定されるようになり、状態により湯釜への立ち入りを許可しているようだ。
尚、人気の高かった本白根ゲレンデと白根火山ロープウェイについては、残念ながら廃止になることが決定されている。





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夜の高速をぶっとばして安全第一でやってきたのは、草津白根山の「白根レストハウス」(2,000m)。
途中ひどい濃霧で前が見えず、「会社帰りに毎週毎週何やってんだろう。」と一人悪態をつく。

頼れるはずの相棒は自宅を出て数分で眠りに落ちていた。
眠たいし、腹立つわ~。



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04:30、「おい、起きろ。朝焼けだ。天気下り坂みたいだからサクッと登るぞ。」



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05:20、もたもたと身仕度を終え出発。



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おおっ!
すげーっ!
喜べっ!
観光地だっ!



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最高点までは多少のアップダウンはあるものの、起点との比高は僅かに150mしかない。
滅多に観光地的なところに連れて行ってもらったことの無い息子くんが嬉しそうに弓池へと下りていく。



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わぁ、ワタスゲだ。

彼はこの日からミラーレス一眼デビューを果たした…が、最近はスマホばかりになってしまった。
確かにクソ重い一眼を首からぶら下げているのがアホらしくなるくらい、スマホの画作りは良いと思う。



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濡れていてあんまりぽわんぽわんしていないけれど可愛らしいよね。



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戻ってくる時にはきっと乾いてるよ。



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これはモウセンゴケ。
食虫植物なんだよ。



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後ろのピークが湯釜のある白根山みたいだね。
お楽しみは後にしような。



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わぁ...アヤメだ。



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この日は中央火口を反時計周りで周回し、湯釜を見る計画である。
というか、この時初めて地図を見て理解した
初めて登る山はやはり楽しい。



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コマクサリフトの横にあった熊避け鐘をキーンと鳴らし、いざ樹林帯へ。
標高は既に2100mだ。



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緩く上げる....
と、あまりに呆気なく空が広がった。

スニーカーの方が良かったかもね。



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お、晴れてきたぞ!
でも、何にも見えないんだね....。

草津白根山って展望あるのかな?



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私は花を撮るためレンズ交換で大忙し。
水平移動になると息子くんが先行してしまい、すぐに見えなくなった。
まあ整備されていそうだし心配いらないかな。

しかし少しすると雄叫びが聞こえてきて驚いた。
お、熊にでも食われたか?
花達に後ろ髪を引かれつつ小走りで追いかける。



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うわぁ!
素晴らしい解放感!
こりゃ絶叫するのも納得だ。

目の前にあるのが通称「から釜」、かつての火口だね。



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そして足元にはコマクサの大群生が!

本白根山の広い砂礫帯は、その全ての場所でコマクサが咲いている。
これほどまでの広範囲で見ることのできる山は、他にあるのだろうか。

時を忘れて撮影を楽しんだ。



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ところが、しばらくするとマクロレンズが不調となった。
これ以降、超広角と望遠で撮ることになってしまい、渋々重い腰を上げる。



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それにしても全く人がいない。
みんなもっと遅い時間に登ってくるのかな。
それとも湯釜目当てなの?



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朝の光がこんなにも綺麗なのにね。
話しには聞いていたが、草津白根山はまさに花達の楽園だった。



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火口の縁に沿ってつけられた登山道で本白根山を目指す。
その行程はどこまでも緩やかだった。

左手のピークは本白根山展望所である。



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喜びに満ちた登山道を振り返る。
色の違う砂礫帯が、先程まで撮影を楽しんでいたコマクサ群生地....。

そして、あの日の噴火は正にその直下で起きた。



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あの想い出の場所が、半年も経たずに噴火口になるだなんて、誰が想像することができようか。

2018年5月、噴火後に初めて行われた調査隊の報告書から写真をお借りした。
1m以上火山灰が積もり、今なお噴気を感じると報告書にあった。

美しかった楽園がこんなにも殺伐とした風景に変わってしまった。
想像はしていたが、写真は一撃で真実を伝えてくる。

受け入れる他は無い。



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今は亡き、天然色の本白根山遊歩道を行く。



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訪れる災難など知る由もなく、五感に触れるその日の全てを平和な気持ちで楽しんだ。



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良いタイミングで訪れることができたのだと思う。
今となっては切り撮った全てが大切な宝物だ。



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山頂部を際まで進むと展望が広がった。
大きく見えているのは浅間山、左奥は奥秩父山塊だ。



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夏空を気持ち良さそうに泳ぐ息子くんの姿を撮りたくなり距離をおいた。
方向を変えながら本白根山最高点へ向かう。



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ハイマツは短く抜けた。



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火口の全景を撮影していると息子くんのペースが上がり、更に小さくなった。

もしかしてそろそろなの?
いつものダッシュを撮るため小走りで追った。



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あ~あ、間に合わなかった...。
07:00、本白根山遊歩道最高地点(2150m)到着。



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拘る登山者は登山道の無い本白根山標高最高点(2171m)を目指すのだろう。
我々の山頂はもちろんこの場所だ。



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普段の登山とは随分と違うけれど、なんだかいいよね。
ひとまず、おつかれさん。



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最後の夏だとは夢にも思わず、コマクサ達が風に揺れる。
息を止め、風の止むその瞬間を待ちシャッターを切る。

上手に撮ってあげられなくてごめん。



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そろそろ歩こうか。



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気温が高く、早くも霞が強くなってしまっていたが近隣の山はよく見えていた。

浅間隠山(左)と鼻曲山(右)。
左奥は榛名山の辺りだろうか。



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見慣れぬ角度からの四阿山が強く印象に残った。



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コマクサに彩られた遊歩道を進む。



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時は否応なしに流れ去る。



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そしていつも、過ぎ去った後に気付くのだ。
それがどんなに尊い時間であったのかを。



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07:30、「本白根山展望所」到着。



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まだ天気は大丈夫そうだね。



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一休みして腰を上げた。

またコマクサの頃に遊びに来よう。
二人で何度も振り返り、展望所を後にした。



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草津白根山のコマクサは、かつて乱獲により絶滅寸前にまで追い込まれた。
復活に尽力したのはボランティアや地元の方々だ。
長年にわたる努力のおかげでこの日の隆盛があった。

もう一度、唄うように夏風に揺れていたコマクサ達に会うことはできるのだろうか。
その時、また息子くんが一緒だったなら嬉しいな。



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お、なんだなんだ。



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ヒカリ苔だ!
でも写真に撮るのは難しいよね。



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ぐるりと一周。
この日すれ違ったのは結局3人だけだった。



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ちょっと雲が増えて来ちゃったけれど、湯釜は大丈夫かな。



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08:45、駐車場に戻り不要な荷物を置いた。
火山シェルターの横を通り、湯釜へと向かう。



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取り付きにはストックの貸し出しがあった。
流石にこちら側は人が多い。



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こういうところを歩くのって疲れるんだよね…。



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火山シェルターの裏手に広がる、馴染みの薄い志賀高原の山々が新鮮だった。
眼下の道路は志賀草津高原ルート、万座プリンスホテルが見えていた。



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おっ!


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うわぁ、なんて神秘的な色なんだろう。



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今も十分に素晴らしいけれど、もう少し光が当たるまで待ってみようか。

待ち時間でレンジャーの方と少し話をした。
冬には湯釡の際や白根山のピークにも立つことができるようだ。

スノーシューで遊びに来ようと約束をした。



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その後一瞬光が射したが、急激にガスが湧き出し湯釜は一切見えなくなった。
さあ、下りようか。



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「白根山の高山植物と歴史館」に立ち寄って、展示されていた噴火の資料を見学した。
最近の記録も掲載されていたが、それらの全ては当然過去のものであり、未来の出来事と結びつけることは全くできなかった。
自然の力は絶対だ。



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たくさんの約束を草津白根山へ置いてきた。



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息子くんはこの日の山行がとても楽しかったらしく、下山後もよく草津白根山の話をした。
彼が撮った上の二枚は何度も誉めた。

あの日会社から帰宅すると、『草津白根山が噴火したんだよ!』と、玄関先へ飛び出してきた息子くんの顔が、今も忘れられない。
スノーシューハイクの約束を実行に移そうと、準備を始めた矢先の出来事だった。

ネット上には、在りし日の楽園の姿がそこかしこに転がっている。
あたかも、今でも動いているかのようなロープウェイ、駐車場への案内、ツアー紹介…そして、咲き誇るコマクサ達。
消すべきなのか遺すべきなのか。
せめて埋葬してやることはできないか。

止めたい時間と、止められてしまった時間とのやるせなさが、胸につかえて言葉にならない。
想い出の続きを書ける日が来ることをただ願い、レクイエムのつもりでこの記事を書いた。


今回も最後までお読み頂きまして、大変ありがとうございました。

第二部の記事へはこちらからどうぞ。



↓励みになりますので、よろしかったら『ぽち』っとお願い致します(^^)/


by yama-nobori | 2018-08-07 21:31 | 登山 2017 | Comments(1)
Commented by ranaporosa at 2018-08-28 20:52 x
いつも楽しく拝見しております。冬の赤岳の記録など,自身の山行の参考として,たいへんありがたく思っております。

もし,間違っていたら大変申し訳ございません。昨年末の12月27日に北八ヶ岳の麦草峠の小屋にご子息と向かわれませんでしたでしょうか?
私は,その日,スノーシューハイキングで北八ヶ岳ロープウェイから雨池,麦草峠,北八ヶ岳ロープウェイの周回コースを歩きました。その時に,麦草峠の池の辺りと,ヒュッテの辺りでよく似た親子連れをお見かけしたものですから・・・・。その時に,話しかけようかなあ,確かめたいなあ・・・などと思いながらも,もし違っていたら失礼かな,と躊躇した覚えがあります。
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