白砂青松ここに極まれり③@離山 2017.07.08(土)~09(日)



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オベリスクを目指す第三部のスタートです。

第二部の記事へはこちらからどうぞ。





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まだ遠い地蔵岳を目指し、離山を後にする。



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白ザレの斜面を下り東側から回り込むと、石空川北沢の源頭に至る。
最低鞍部から地蔵岳までは、標高差およそ500mの登りとなる。



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少し進むと思いがけず水音が聞こえはじめ、覗き込むと太い水流があった。



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セーブ気味に繋いでいた水筒の中身を全て入れ換え、喉を鳴らしてごくごくと飲んだ。



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軽く登り、短い藪を抜けるとミツクチ沢の大崩壊地が眼の前に現れた。
いつも駒から眺めていたあの場所に立っているのだと思うと感慨深い。
縁に沿って進むと、今度はやや大きな水音が聞こえてきた。



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音の正体は美しく流れ落ちるミツクチ沢の滝だった。
この滝を目にしたことのある登山者はどの程度いるのだろうか。



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尾根伝いに上げて行く。

離山以降足元はすっかり安定し、体重を安心して預けることのできる木々が多くなった。
藪は全く気にならない。



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やがてシャクナゲが煩くなり始めたので、私は鹿道を辿りややミツクチ沢側からこれを避けることにした。
T氏は直登を選択したようだ。



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ルーファイが功を奏し全ての藪を回避することができた。
やや沢側に寄り過ぎたのでは無いかと感じていると、ぐっと近くなったオベリスクが正解を教えてくれた。



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気づけば離山がずいぶんと低くなっている。



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尾根上に復帰しようと急斜面を這い上がると、丁度よいタイミングでT氏と合流となった。
さほど騒ぐ程の藪では無かったようだ。



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再び二人で進むと空が近づいた。



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2700m台地に乗ったのである。



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そこは奇岩の点在する不思議な場所だった。
幾度と無く登っている鳳凰ではあるが、この方向からのオベリスクは互いに初めての眺めである。
周囲の山座同定に手こずったことも新鮮な想い出だ。



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ハイマツから頭を出した巨岩で渡る。



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巨岩の飛び石が途切れると、高さ2mを優に超えたハイマツが広がった。
幹の上に乗り、バランスを取りつつ海原を進む。
落ちれば簡単に抜け出すことは困難だろう。



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振り返ると奇岩の先に甲斐駒ヶ岳の姿があった。
2700m台地からの眺望を確認するため、T氏は一人逆方向の末端へと移動する。



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私は妙に疲れを感じるようになり、巨岩の上で帰りを待っていた。



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手強いハイマツに行く手を阻まれ、オベリスクは容易に近づいてこない。



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途中ハイマツの無い平場で焚き火の跡を発見。
人知れず素晴らしい山歩きを楽しんでいる同志がいることを知り嬉しくなった。

ここで迎える朝夕の光の移ろいはきっと素晴らしいのだろう。
オベリスク側からならば、さして苦労することなくこの場所にやってくることができるはずだ。
楽しみができた。



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やや深いハイマツを抜け出すと、唐突にオベリスクが現れた。



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あれほどまでに遠かったオベリスクが、いま目の前にある。
どんなに遠くとも、歩みを止めずにいれば目標に到達することができる登山はつくづく単純で良い。



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これまで幾度となく羨望の眼差しで見下ろしてきた離山は、もういつもの姿では無くなっていた。
憧れのフィルター越しに輝いていたその山は、この日を界に、ディテールを思い描くことのできる汗臭い本当の山となったのだ。



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実はこの日、久しぶりにオベリスクに登る計画を立てていた。
しかしあまりに休憩と寄り道が多かったため時間切れとなり諦めた。

慣れた岩場を賽の河原へと向かい下りて行く。
すると、思いがけない光景と出会い前へ進めなくなった。



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一足先に降り立ったT氏が、山に向かい頭を下げていたのである。

なんて綺麗なお辞儀をするのだろうか。
人生をかけ山と向き合う彼の真摯な想いがあまりにも美しく胸を打たれた。

いつまでも眺めていたい尊い光景に、熱いものが頬を流れ動けなくなったのだ。



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私もT氏に習い、その後は鳳凰小屋へと駆け下る。
一般道のなんと快適なことか。



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19:00、稜線からは12分で下りてきた。
支配人A氏には内緒での訪問である。



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忍び足で台所に向かうとA氏と目があった。
しばし時間が止まる。

人間の目というやつは、これ程までに飛び出るのかと、こちらの方が驚いた。
T氏も一緒だと伝えると「マジっすかー。何やってんすかー。」を連呼する。

落ち着け支配人。



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動揺しまくりのA氏はひとまず放置してまずはこれ。
かんぱい!

うんまい!!
...はずが、二口程飲んで喉を通らなくなった。
猛烈な寒気に襲われ震えが止まらなくなったのだ。



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最初に違和感を感じたのは熊小屋だった。
その後行程が進むにつれ、喉の痛みと妙な倦怠感が増して行く。
食欲は無く、僅かに煎餅を二三枚食べたのみで歩き通し、普段は殆ど飲まない水をずいぶんと消費した。

張り詰めた緊張感が登らせてくれていたのだろう。
A氏に解熱剤と風邪薬をもらい、防寒着を借りてへたりこんだ。



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この日の鳳凰小屋はシーズン最初の大入りとなっていった。
とんでも無い日にとんでもない時間に現れた我々を快く迎え入れてくれたA氏に感謝である。



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それでもこの日のお客さん達は人数の割にとても静かで、食事が終わると早々に寝床へと向かったようだ。
談話室には誰もおらず、私は残ったままのビールを持て余し横になっていた。



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弱った身体にスパイスの利いたカレーが嬉しかった。
お土産に持ってきていたキュウリが好評で、特に新人小屋番のAくんが喜んで食べてくれた。



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早々に寝なければいけないことはわかってはいたが、談話室での時間を共有したかった。
仕事が終わりみんなが酒を酌み交わす中、私は一人お湯を飲み、虚ろな頭で心地よく話し声を聞いていた。



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花崗岩の危ういトラバースを進む夢を繰り返し見た。

遅い時間まで眠らせてもらい、身体はふらつくものの随分と軽くなっていた。
おそらく、昨夜はかなりの高熱だったのだろう。



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清々しい朝の光の中、小屋番さん達がテキパキと働き登山者達を送り出している。
一宿一飯の恩を返すことができず申し訳ないと思いながら、鳳凰小屋の大好きないつもの光景をぼんやりと眺めた。

オーナーが大切にしているキバナアツモリソウが花期を迎えひっそりと咲いていた。



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久し振りに会ったA氏はすっかり支配人の顔となり、やり甲斐を感じているのだと笑顔で話してくれた。



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彼を中心に、この年の鳳凰小屋も素晴らしいメンバーだった。

いつか私もみんなの輪に入ってここで暮らしてみたい...
以前からそんな夢を持っていたが、オーナーと支配人の御厚意で、今年の8月半ば辺りから息子くんが働くこととなった。
2018/07/14~16はその予行練習ということで、私と二人でお手伝いに行くことにもなっている。
益々縁の深まる鳳凰小屋である。



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シーズン中はなかなか揃って歩くことはできないけれど、これからもよろしくね。



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お世話になりました。
また遊びに来ます。



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A氏、そして小屋番のみんな、ありがとう!
09:40、鳳凰小屋を後にした。



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二人共、この時期の御座石ルートはあまり歩いたことが無く、オサバグサが咲くとは知らなかった。



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楽しみにしていた離山は見ることができなかった。
燕頭からはやや飛ばして下りて行く。



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11:30、西平到着。



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御座石林道を精進ヶ滝へ向かう。
途中のつづら折りは全てショートカットで一気に下りきった。



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12:30、アナグマに出迎えられ下山完了。

帰路の途中で熊小屋が見えた。
『く、ま、ご、や』と呟くT氏の不気味な嬉しそうな顔が忘れられない、大満足の山行だった。


さて、藪山の位置付けである離山ではあるが、薮の密度は概ね薄く「漕ぐ」程の場面は僅かしか現れない。
しかし、高等技術は必要無いものの、ある程度のクライミング技術が要求される岩山であり、難峰の一つに数えられていることに反論の余地はない。
ロープ・ビバーク装備の携行に加え、ソロでの行動は慎むべき、安易に入山してはならない一座である。

あれから月日は流れ、この辺りにやってくると、名だたる名峰達を余所に真っ先にこの山群を探すようになった。
特に尾根の末端で小さく頭をもたげている熊小屋を見つけては、一人あの日の山行を思い出している。
南アルプスの北部は随分と歩き回ったつもりであったが、知った気になるにはまだまだ経験が足りないようだ。
新しい発見を求め、もうしばらく同じ山域に固執したいと考えている。


今回も最後までお読み頂きまして、大変ありがとうございました。

おしまい。

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by yama-nobori | 2018-07-09 20:49 | 登山 2017 | Comments(0)
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