失われた古道を征く②@四十貝山~千頭星山~オオナジカ峠~夜叉神峠 2017.05.14(日)



f0344554_22182252.jpg
四十貝山の山頂標を見つけることができず、やや暗い気持ちで歩き始める第二部のスタートです。

第一部の記事へはこちらからどうぞ。






f0344554_22183418.jpg
11:45、1988m地点を出発する。
次に目指すは標高2,138m、南アルプス前衛山である「千頭星山(せんとうぼしやま)」である。



f0344554_22183424.jpg
f0344554_22183475.jpg
四十貝山を越えると植生が大きく変化する。
針葉樹の美林が広がり、苔むした岩や倒木が目立ち始めた。



f0344554_22183551.jpg
木漏れ日が森を瑞々しく輝かせ、実に良い雰囲気だ。

千頭星山南面に広がる原生林の山深さに見入っていた時だった。
視線の先で動くものがあり思わず身構える。

このエリアは熊が多いことでも知られており、過去には大きな事故の報告もある。
事実、熊の糞や爪研ぎの跡がいたるところにあった。



f0344554_22183221.jpg
幸いなことに動くものの正体は二頭の幼いカモシカだった。

しかしほっとして目があった瞬間の出来事である。
こちらに驚いたのであろう彼らは私の横を猛スピードで駆け下り、更に加速度を増して弾丸の如くT氏へと突き進んで行った。

硬直するT氏。
ヤバイと思った瞬間、2m程手前で直角に方向を変えた彼らは森へと消え去り、事なきを得た。



f0344554_22183899.jpg
f0344554_22183866.jpg
f0344554_22183954.jpg
安堵のため息と共に静けさが戻ると、周囲の木々は益々美しく、命を育むとても健全なものに見えるようになった。



f0344554_22183978.jpg
f0344554_22183871.jpg
サザレ石と呼ばれる岩を通過する。
名盤やトラロープが設置されてはいたが、メジャールートから外れているこの場所を訪れる登山者は、果たしてどの程度いるのだろうか。



f0344554_22184481.jpg
f0344554_22184406.jpg
f0344554_22184583.jpg
標高が2,000mを越えると、所々で残雪が見られるようになった。



f0344554_22184521.jpg
樹林帯を抜けると再び笹原が現れる。



f0344554_22184421.jpg
見覚えのある風景だ。
鳥瞰図が脳裏に浮かぶ。

明るい気持ちで斜面を登る。



f0344554_22184910.jpg
f0344554_22184966.jpg
12:10、「千頭星山」(2,138m)登頂。
2016.05.04以来の懐かしい再訪だった。

前回の記事へはこちらからどうぞ。


f0344554_22185029.jpg
ここでしばらく休憩をとった。

あの日息子くんが腰掛けていた木が特別なものに思える。
また一つ、新しい線が点と繋がったのである。



f0344554_22184985.jpg
ここからは、苺平を経て南御室小屋へと続く縦走路となる。
山と高原地図では破線扱いだ。



f0344554_22185314.jpg
f0344554_22185386.jpg
まずはオオナジカ峠に向けて標高を下げる。



f0344554_22185326.jpg
f0344554_22185429.jpg
鳳凰山の展望地であるガレの縁に立ったが、残念ながら何も見ることができなかった。



f0344554_22185229.jpg
f0344554_22185715.jpg
f0344554_22185851.jpg
鎖の設置されたやや高度感のある崩落地を下る。



f0344554_22185897.jpg
その後も足場の悪い登山道で標高を下げ続ける。



f0344554_22185823.jpg
途中、かつて信仰の対象となった「おおなじか」と呼ばれる一際大きな特異な岩峰が現れる。



f0344554_22185726.jpg
f0344554_22190188.jpg
f0344554_22190252.jpg
オオナジカ峠の地名由来である大岩を巻きながら更に下げる。



f0344554_22190243.jpg
f0344554_22190261.jpg
f0344554_22190101.jpg
しばらく緊張感を保ちながら進むと、ようやく笹が足元を鳴らすようになった。



f0344554_22190546.jpg
f0344554_22190585.jpg
13:25、標高1,900mのオオナジカ峠(大馴鹿峠)に降り立った。



f0344554_22190682.jpg
f0344554_22190689.jpg
かつて芦安芦倉と青木村(韮崎市)を結ぶ早道として交通があったのだという笹の鞍部は、時間に埋もれてひっそりと静まり返っている。
ここにもまた、いつの日にか歩いてみたいと考えている古の道の一つが眠っている。



f0344554_22190970.jpg
f0344554_22190510.jpg
これから始まる急登を思い気持ちを重くしていると、それを加重させるかのように冷たい雨が落ちてきた。



f0344554_22190979.jpg
f0344554_22190941.jpg
次に目指すは南御室小屋の南東に位置する苺平。
標高2,515mまで、実に600mを超える登り返しとなる。



f0344554_22190864.jpg
f0344554_22191082.jpg
千頭星山までは実に良く足が出ていたが、この頃になるとすっかり疲れていた。
忍耐の行程が始まった。



f0344554_22191342.jpg
f0344554_22191262.jpg
f0344554_22191327.jpg
楽しみにしていた、崩落地からの数少ない展望も一切無い。



f0344554_22191331.jpg
f0344554_22191231.jpg
強い斜度に踏み抜きの激しい残雪が追い打ちをかける。



f0344554_22191721.jpg
アイゼンもゲイターも携行していなかったため、予想より多い残雪に閉口する。



f0344554_22191756.jpg
f0344554_22191706.jpg
ところがA氏とT氏のペースが上がり始めた。
初めて歩くルートであることに加え、季節外れのラッセルが楽しくて仕方ないのだろう。



f0344554_22191709.jpg
あの若さが羨ましい...。
私は一人すっかり重たくなった体を持ち上げ続け、ただただ必死に彼らを追った。



f0344554_22191659.jpg
しかしそんな努力も空しくすぐに引き離される。
やがて急斜面の残雪を呪う以外何も考えることは出来なくなり、ぼてぼてと無心でトレースを辿るようになった。



f0344554_22192141.jpg
そして精根尽き果てた頃、ようやく平坦地が現れた。



f0344554_22192119.jpg
f0344554_22193684.jpg
f0344554_22192123.jpg
15:45、苺平到着。
鳳凰山の主稜にようやく辿り着いたのだ。

ケルンに寄りかかりながらの一服が実に美味かった。



f0344554_22192030.jpg
f0344554_22192298.jpg
f0344554_22192596.jpg
夜叉神峠へ向けた下りになるとすぐさま雪は消え去って、歩きにくい夏道となった。



f0344554_22192520.jpg
f0344554_22192674.jpg
久しぶりの無積雪道を新鮮な気持ちで進んでいると太陽が顔を出し、再び森の美しさに心を打たれるようになる。
一瞬ではあるが、農鳥岳を見ることができた。

これでようやく元気が戻る。



f0344554_22192610.jpg
f0344554_22192508.jpg
f0344554_22192946.jpg
f0344554_22193011.jpg
良いペースで杖立峠まで下りてきた。

ところでこの杖立峠、本来この場所では無かったことをご存知だろうか。
杖立峠、そして先程の苺平にも、今は無き古の道が眠っている。
そんな話もまたいずれ書きたいと思う。



f0344554_22192901.jpg
f0344554_22194044.jpg
f0344554_22194110.jpg
17:30、夜叉神峠に到着。
白峰三山大障壁へのビューポイントも、この日は役目を果たせていなかった。



f0344554_22194192.jpg
A氏とT氏は、なんとここから駆け下り始めた。
なんて体力だ...。

私もCTの60%程で後を追ったが、二人の姿はあっと言う間に見えなくなった。



f0344554_22194157.jpg
f0344554_22194098.jpg
登山口に到着すると、二人が笑顔で待っていてくれた。
おつかれさま。



f0344554_22194553.jpg
駐車場へと向かう途中、早朝取り付いた四十貝山へと続く尾根の斜度を見て驚いた。
なんてきつい傾斜角だろう...、あれを登ったのか。
また一つ北部への足跡を残すことができたのだと想うと、心がじんわりと暖かくなった。



f0344554_16571139.jpg
この山行を堺に、御座石ルートを歩く度に千頭星山が気になるようになったのだとA氏が言っていた。

※富士山の真下が千頭星山、その後オオナジカ峠を経て苺平への急峻な尾根が右手に続く。
(鳳凰小屋付近の富士見岩より撮影)


尾根へ汗を落とせば、それはかけがえのない思い出と共に頂へと続く一本の線となる。
寡黙に線を引き続ければ、それらは累々と折り重なり脳裏に浮かぶ鳥瞰図となる。
そして季節を変え山中に幕を張れば、やがてそこは自分だけの居場所となる。

歩き慣れた山域にも、まだまだ数多くの古の道が眠っている。
南アルプススーパー林道の開通を堺に、北部の登山道はその多くが廃道となったのだ。
この100年間で、これ程までに登山道と山の暮らしが変化した山域は、他にあるのだろうかと繰り返し考える。

私はきっと、その半分も歩くことはできないだろう。
しかし一つでも多くの線を引き、時空を超えて南アルプスに居場所を増やして行きたいと考えているのである。


おしまい。

今回も最後までお読み頂きまして、大変ありがとうございました。


↓励みになりますので、よろしかったら『ぽち』っとお願い致します(^^)/



登山ランキング
by yama-nobori | 2018-02-12 17:36 | 登山 2017 | Comments(0)
名前
URL
画像認証
削除用パスワード
<< 西丹沢の白き輝き①@矢駄尾根~... 失われた古道を征く①@四十貝山... >>