大菩薩嶺は、山梨県甲州市と北都留郡丹波山村に跨る標高2,057 mの山である。 深田百名山のひとつであり、初心者でも日帰りで楽しむことができるために年間を通じて人気が高い。 雷岩から賽ノ河原の南西に広がるカヤト野原からの展望は素晴らしく、南アルプスや富士山の眺めは秀逸である。 待ち合わせたコンビニにいかついジープが颯爽と滑り込んだ。 我々を見つけたK氏が優しく微笑んでいる。 K氏はかつてジープの専門誌を執筆しており、世界的な冒険家として有名な弟さんをもつ 素敵な写真と言葉が綴られたブログを書いているので読まれてみると良いだろう。 氏のブログへはこちらからどうぞ。 K氏が来るんだと仲間に声をかけると、驚く程のメンバーが集った。 ゲート横の丸川峠分岐駐車場へ車を停めた。 快晴と言うこともあり満車に近かい朝だった。 総勢7名の老若男女混成パーティーで山頂を目指す。 全員が初対面だったので簡単な紹介を行った。 8:15、標高1030m地点から歩き始める。 予報通りの快晴である。 前日に降雪があり、所々凍結があった。 数名がチェーンアイゼンを装着する。 さぞ混んでいるのだろうと思っていたが、時間が遅めだったからだろうか、不思議なことに山頂まで誰にも会うことは無かった。 私もK氏とたくさん話したいことがあったが、初対面のみんなに譲ることにした。 これにはSくんが大興奮。 端から同定して行く姿に私はドン引きである。 到着したのは、標高1685mに建つ丸川荘である。 話し上手で、いつ訪れてもとても親切にしてくれる素敵な方だ。 豆を選びオーダーすると、丁寧に挽いてドリップしてくれる。 この日の珈琲も最高だった。 普段小屋で休憩するようなことの無い K氏とSくんも小屋休憩の経験が無いというのだからどこまで変態なのだろう。 山小屋にお金を落とした経験の無い二人は、財布すら持っていなかった。 結局、酔っ払いの姐御と我々親子だけが普通の登山者であるようだ。 小屋を去ろうとすると、ひょんな事からK氏と只木さんが同級生であることがわかった。 これには大いに盛り上がり、いつもテント泊ばかりで小屋泊経験の無いK氏も泊まってみたいと言い出した。 全ての荷揚げが歩荷で行われている、昔ながらのランプの小屋。 近日再訪計画を立てようと思っている。 通称「丸鍋」と呼ばれるこの鍋は、現在でも丸川荘で使用されているアルミ製の炊飯鍋である。 軽くてテフロン加工が施され、全く吹きこぼれることなく五合の米を炊くことの出来る逸品だ。 丸鍋で炊いたご飯はとても甘くなり手入れも簡単なため、山では欠かすことの出来ない相棒となっている。 里帰りの折には皆にもご馳走しようと思う。 期待以上の美しい森に何度もカメラを向けた。 まだ歩いたことの無い、笠取山へと続く真っ直ぐに伸びた稜線に惹きつけられた。 良い山仲間ができたね。 彼女の定義では「雨じゃない=晴れ」だというのだから実に不憫な山人生だ。 展望の無い大菩薩嶺の頂を息子くんは覚えているだろうか。 明るく楽しい素敵な一枚が撮れた。 「僕、他の人と山頂で写真撮ったの初めてなんです。」 そう言えば、彼のお父さんはかなりの その影響をもろに受けて育ったSくんの撮る写真に添えられた文章は、既に大人のレベルを優に超えている。 FBで知り合った時は中学生だったが、「今度鳳凰に登るんです!」と興奮気味に話していたので「?」だった。 だって、訳の分からないバリエーションで変な山ばかりを歩いている経験豊富なおっさんだと思っていたから..... 順序がかなりおかしいことになっているが、普通の登山を教えるのは私の役目だと思っている。 ちなみに6月に北岳を案内した際、稜線で放った彼の言葉は衝撃的だった。 「双児山が見えてますよ!!」 もちろん甲斐駒ヶ岳近くのそれでは無く、大鹿村付近の双児山なのだから頭が下がる。 更生への道は果てしなく遠い。 遠方から見た大菩薩嶺の頂は、確かにそれであるとハッキリと認識することができるが、実際その場所に立っても実感が無い。 残念ながら展望も無いので、雷岩(2040m)へと移動する。 富士山の姿を見ることはできなかったが、なんて清々しい空だろうか。 思い思いの時間を過ごす。 娘さん(といぷー)も頑張ったんだよね。 昔はよくナイトハイクを楽しんだ。 この場所から眺める甲府盆地の夜景と、月明かりに浮かぶ南アルプスは最高に美しいのである。 また改めて、避難小屋泊の計画でも立てようか。 買い忘れてしまった方は小屋に在庫を確認すると良いだろう。 5年前、富士山に向かって力一杯漕いでいた幼い姿を鮮明に思い出した。 雪対策だろうか。 この日は支柱に縛り付けられており、乗ることができずに息子くんが悔しがった。 山、カメラ、本、音楽、 K氏自身が一番楽しそうに身振り手振りで話しているのが可笑しかった。 特に孫ほどに歳の離れたSくんとは気が合うようで、歳に不相応な深い話で盛り上がっている。 彼の将来が 車道を離れ、登山者用のルートから裂石を目指す。 戦々恐々でその場を離れる。 車道の雪はすっかり溶けていた。 お疲れ様! 下山後は大菩薩の湯で汗を流し、中華料理屋で夕食を食べた。 その席でSくんが真顔で放った「普通の登山って楽しいんですね。」には皆で大笑い。 そう、ラッセルや藪漕や渡渉ばかりが登山では無いのである。 彼の言うとおり、全くもって普通の登山ではあったが、よく笑いよく喋ったとても楽しい一日だった。 仕事も年齢も全く違う我々を引き合わせてくれた山に心から感謝である。
by yama-nobori
| 2017-09-18 21:08
| 登山 2017
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