年は明けたが山の雪は相変わらず少なく、SNS上に溢れる「厳冬期の雪山に登頂しました~!」の投稿や、くるぶし程度の積雪量でも決行されているスノーシューツアーの記事を冷ややかに眺めつつ悶々と過ごしていた。 しかし無い物ねだりをしても仕方がない。 かといって、深雪を求め過ぎれば悲しい結果がついてくることをアホなりに学んだ。 敗退の記事へはこちらからどうぞ。 どこに登れば雪山気分が味わえるだろうかと考えあぐねていると、あの日と同じくSくんからの誘いがあった。 いくつかの候補があがったが、結局歩き慣れた八ヶ岳を歩くことにした。 これだけ雪が少なければ本気の登山者はまず来ない。 その上、なんちゃって厳冬期登山者を退けるには赤岳のネームバリューは十分な効果が期待できる。 意外にも冬季の八ヶ岳が初めてだというSくんは、混雑の無い八ヶ岳をイメージすることができずにいるようだった。 この時期の主流は登攀系、縦走路は絶対空いてるよ。 まあ私を信じなさい。 Sくんのオンボロ車で前入りし、美濃戸口で車中泊を行った。 5:20、美濃戸口スタート。 本日の予定は、硫黄岳~横岳~赤岳~阿弥陀岳の日帰り周回である。 6:10、北沢・南沢分岐を通過。 実は数日前から体調を崩し、前日まで熱があり咳が残っていた。 それでも順調なペースで美濃戸を通過、北沢ルートで赤岳鉱泉を目指す。 Sくんはとっても楽しそうだ。 6:46、堰提広場を通過する。 登山道には殆ど雪が無い。 しかし気温は低いのでいたる所で凍結があった。 原始人のSくんは、つぼ足で 私は現代人なのでチェーンスパイクをつけた。 お天気は上々。 雪を纏った稜線が美しく近づいてくる。 60分程夏のCTを巻いており良いペースである。 この日は特に赤岳鉱泉に用事は無いので、そのまま通過して硫黄岳へと向かう。 斜度がやや強くなると体調不良が顕著となったが、木々の間から山々が見えるようになると心がはやる。 予想通り先行者はいない。 二人だけの静かな登山道を行く。 体調は歩いていれば戻るであろうと考えていたが、体が重く呼吸が苦しい。 Sくんのペースから徐々に遅れ始めた。 樹林帯を抜けるとこれから歩く縦走路を乗せた稜線が視界に飛び込んだ。 素晴らしい展望にSくんのペースは更に早くなった。 尾根に乗るとパノラマが広がった。 一直線に引かれた白銀の北アルプスが、大地と空とを分けている。 雪はまるで少ないけれど、素晴らしい景色じゃないか。 我々だけの稜線歩きが始まった。 振り返れば阿弥陀岳の横から南アルプスが見え隠れするようになる。 縦走が進めば、やがて全容を見ることができるだろう。 何度も振り返り、同じような写真を何枚も撮影する。 この記事を書いているのが梅雨時であるためか、やたらと美しく感じてしまい貼る写真がついつい多くなった。 よって日帰りの記事ではあるが二部構成とする。 ロウソク岩を越えれば、いよいよその時となる。 おどけるSくんがとっても嬉しそうだ。 我々もようやく1300m以上の標高に立つことが出来たのだ。 風は弱く日差しは温かい。 厳冬期であることを忘れてしまう程の特異日だった。 横岳を目指す。 緩やかに標高を下げ始めると、気が抜けた為か急激に体調が悪化し、ふくらはぎに違和感を感じるようになった。 硫黄岳山荘で休憩させてもらうことにした。 お湯を飲んだが食欲は無かった。 しかしそうは言ってもここは歩き慣れた稜線だ。 足さえ動かしていれば時間はかかっても縦走に問題はないだろう。 仮にCT程のペースまで落ちてしまっても、全く問題無いくらいの貯金が既にできていたからだ。 ところが再び登り始めた直後、ふくらはぎが激しく攣ってしまい立っていられなくなった。 あまりの激痛に悶絶し、意思とは無関係な角度に曲がろうとする自分の足との格闘が始まった。 やや先行していたSくんは、まだ私の異変には気づいていなかった。 少しすると再び歩けるようになったので、だましだまし歩く。 しかし、斜度が強くなると確実に攣るようになる。 アイスの斜面で足が攣れば滑落の危険がある。 なんとか付き合い方を見つけようともがいていたが、攣るタイイングが自分でも分からない。 仕方なくSくんへ足の不調を白状することにした。 足が攣るなんて、登山を始めて以来二度目の経験だった。 しかも一向に収まってくれる様子がない。 考えてみれば、ここまでお湯を50cc程とっただけで何も食べず、かなりのハイペースで登ってきていた。 無理やり水分と塩分を摂取したものの当然の事ながら即効性は無い。 ペースを落とし、いつ攣ってもバランスを崩すことの無いよう慎重に進むことにした。 横岳直下のトラバースを越える。 二人の最高点を再び更新することができた。 体調不良とは言っても、ここまで70分程予定より早い。 天候は文句なしの快晴。 予想通り稜線上に人の姿は無い。 こんなところで戻るなんてあり得ない。 「少しペースを落とせば大丈夫。」 10:50、赤岳への縦走を再開した。 第二部の記事へはこちらからどうぞ。
by yama-nobori
| 2017-07-10 20:54
| 登山 2017
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