第三部の記事へはこちらからどうぞ。 5:50、赤石岳を出発する。 先行した登山者達は皆大倉尾根から下りて行く。 どうしても赤石岳からの御来光を眺めたかったサンダル君は、明日に期待し延泊することを決めたようだ。 大倉尾根分岐で登山者を見送り、まずは小赤石岳を越えて行く。 06:02、「小赤石岳」(3081m)登頂。 再び振り返り、まだ近い赤石岳を目に焼き付けた。 稜線上で雨に打たれるのは嫌だなと思っていたが、程なくして止んでくれた。 ガス抜けも始まり展望が得られるようになった。 見えているのは中央アルプス。 眼下の流れは、赤石岳山頂付近に端を発し、やがて天竜川へと合流する小渋川である。 小赤石岳からは大聖寺平を経由し、一度荒川小屋まで標高を落とす。 前岳~中岳直下をトラバースする夏道が良く見えていた。 6:55、「荒川小屋」(2652m)に到着した。 逆回りで訪れる時には、いつも名物の「荒川丼」「荒川カレー」と共にビールを楽しんでいたが、この日はぐっと我慢する。 ご主人への挨拶を済ませ、小休止のあと前へと進む。 ダケカンバの林の中で、マツムシソウが秋に揺れていた。 赤石岳から荒川小屋まで、既に461mの標高を下げた。 次に目指す悪沢岳は3141mなので、ここから先489mを登り返すことになる。 中岳南東斜面のカール地形を進むこの登山道は、忍耐の必要なキツイ通過点である。 見上げた稜線は遥かに高く、何度恨めしげな視線を投げてみても容易に近づくことはない。 しかし振り返る度に存在感を増す赤石岳と、右へ右へと移動して行く笊ヶ岳が、前に進んでいることを教えてくれる。 盛夏の頃は南アルプス最大規模となるお花畑の登山道を、この日はただただ寡黙に詰める。 ザックをデポし前岳へと向かう。 行程は短く、稜線上を赤石岳方向へやや戻る。 赤石岳が随分と遠くなった。 高山裏避難小屋の親父さんは、変わりないだろうか。 稜線上からは、思い出深い慣れ親しんだ峰々が見えるようになった。 8:35、「中岳」(3083m)登頂。 やはりこの「前岳」と「中岳」を二座と数えるのは無理があるように思う。 両者は極めて近く、標高差も殆ど無い。 日本人の古来から「三」という数字が好きなことに起因しているのだそうだ。 中岳山頂直下には、小さな「中岳避難小屋」(3060m)が建っている。 気さくな優しい小屋番さんのいる、赤石岳避難小屋同様に展望の素晴らしいお薦めの山小屋である。 塩見岳から続く本谷山~烏帽子岳~小河内岳がぐんと近くなった。 これから近づく北部ではあったが、いつガスがかかるか不安だった。 手前が塩見岳~蝙蝠岳、奥に見えているのが仙丈ヶ岳~甲斐駒ヶ岳~間ノ岳~農鳥岳である。 浮石の多いザレた急坂を黙々と登る。 9:30、「悪沢岳」(3141m)登頂。 赤石岳避難小屋からのCT5時間5分に対し、所要時間3時間40分での到着となった。 荷物を下ろし、しばし名峰からの展望を楽しむことにした。 よってこの頂からも、北部の風景への大観を遮るものは何一つ無い。 兜のような独特な山容をした塩見岳がよく目立つ。 そこからこちら側に向かって派生しているなだらかな尾根は、南アルプス好きなら一度は歩いて頂きたい、塩見岳~蝙蝠岳~徳右衛門岳~二軒小屋をつなぐ蝙蝠尾根である。 北岳から伝付峠までの縦走を11月に予定していたので、この日、蝙蝠尾根に注いだ眼差しは並々ならぬ熱いものだった。 しかし残念ながら暴風に阻まれ実現することなくシーズンを終えた。 やはり山は逃げるのだ。 今年こそは踏破したいと思っている。 11月の白根三山縦走の記事はこちらからどうぞ。 案の定ガスで隠れてしまったが、塩見岳から北へと続く長大な尾根は、仙丈ヶ岳へと至る仙塩尾根だ。 そのやや右側には、遠く離れても花崗岩の白さが良く分かる甲斐駒ヶ岳が鎮座する。 まだガスに飲まれずにいる間ノ岳は、白嶺南嶺~農鳥岳を従え王者の風格だった。 岩は脆く事故の多い通過点である。 私の歩いた翌週、この場所にハシゴが設置されたのだそうだ。 南部の稜線上に設置された初めての登攀補助具ではないだろうか。 右が丸山、奥が悪沢岳のピークである。 10:50、「千枚岳」(2880m)登頂。 とうとう誰にも出会うことなく、主要のピークを全て踏み終えることができた。 やはりこの時期の南部は抜群に静かで良い。 次の目標まで残りCT5.0h、さあどこまで巻けるだろうか。 せっかくなので、可能な限り早い時間に到着しその施設を満喫したい。 11:10、森林限界を離れ樹林帯へと標高を下げ始めた。 第五部の記事へはこちらからどうぞ。 今回も最後までお読み頂きまして、大変ありがとうございました。
by yama-nobori
| 2017-04-12 21:00
| 登山 2016
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