フォッサマグナ西縁に立つ@八紘嶺 2016.06.27(月)



f0344554_10500742.jpg
八紘嶺(はっこうれい)は、山梨と静岡の県境、安倍奥にそびえる標高1918mの山である。
白峰山脈から南に派生する稜線上にあり、大谷嶺・山伏と連なり安倍川の源流をなす。
八紘嶺の東面は日本列島を東西に分ける大断層、フォッサマグナ(中央地溝帯)の西縁に当たる。
糸魚川から南下し、松本、南アルプスを経て静岡へと至る「糸魚川-静岡構造線」に沿っては良質な温泉が湧出することから著名な温泉地が多い
2001年に「新倉の糸魚川-静岡構造線」として国の天然記念物に指定された逆断層の露頭を奈良田に向かう途中の早川町新倉で見ることができる。





f0344554_10504017.jpg
八紘嶺への登山口である安倍峠へ通ずる林道豊岡梅ヶ島線の山梨側が数年に渡り通行止となっている為に、静岡側へと大きく回り込む必要があった。
このアクセスの悪さから、いつ登ろうかと悩み続けている内に、とうとう八紘嶺が取り残された。
しかし日が経つにつれ、山の名前とは思えぬ不思議な響きを持つこの一座への思い入れは少しずつ大きくなり、やがて強く惹かれるようになっていく。
大谷嶺(おおやれい)の南斜面にあるという、宝永地震によってできた山体崩壊である大谷崩(おおやくずれ)や、見知らぬ山域の展望も楽しみだった。



f0344554_10503765.jpg
f0344554_10504078.jpg
山伏を登り終えた翌日、さほど長いCTでは無かったのでスタート時間を遅い時間に設定した。
梅ヶ島温泉を通過し安倍峠へと向かうと、運の悪いことにこの日から林道が閉鎖されていて肩を落とした。
これにより下段の八紘嶺安倍峠登山口から登ることになってしまい、往復でCTが2時間程伸びることとなった。


山伏の記事へはこちらからどうぞ。


f0344554_10510816.jpg
9:00、身支度を整え歩き始める。




f0344554_10510998.jpg
昨日の疲れが残り、やや体が重かった。



f0344554_10510997.jpg
f0344554_10511052.jpg
f0344554_10510781.jpg
視界の効かない植林地を緩やかに登り始めると、程なくして急登となった。




f0344554_10513757.jpg
f0344554_10513857.jpg
そのまま急登は続き、500m程標高を上げたところで本来歩き始めようと考えていた「八紘嶺登山道入口」(1400m)に辿り着いた。



f0344554_10513859.jpg
10:00、小休止の後、再び歩き始める。



f0344554_10513979.jpg
f0344554_10520614.jpg
f0344554_10513697.jpg
緩やかに登る。



f0344554_10520731.jpg
f0344554_10520868.jpg
f0344554_10520897.jpg
10:22、八紘嶺と安倍峠の分岐を通過。
登山道は良く踏まれており明瞭だ。



f0344554_10520627.jpg
f0344554_10523741.jpg
10:35、分岐から少し進むと崩落地の縁に出た。



f0344554_10523835.jpg
f0344554_10523940.jpg
「富士見台」(1550m)と呼ばれる崩落地からは、残念ながら富士の姿を見ることは出来なかった。
今にも雨を落としてきそうな雲が湧き、風も冷たい。



f0344554_10523905.jpg
f0344554_10523771.jpg
f0344554_10530793.jpg
富士見台からは徐々に悪路となる。



f0344554_10530847.jpg
f0344554_10530859.jpg
f0344554_10530912.jpg
短いトラバースが連続し、危険箇所へはトラロープが設置されていた。



f0344554_10530658.jpg
f0344554_10533758.jpg
f0344554_10533877.jpg
登山道が安定してくると前方が明るくなった。
ようやく尾根に乗るようだ。



f0344554_10533994.jpg
f0344554_10533651.jpg
尾根に乗ると登山道は平坦となった。



f0344554_10540769.jpg
f0344554_10540821.jpg
f0344554_10540888.jpg
f0344554_10540963.jpg
時々視界が開けるようになったがガスがかかってしまい残念な展望だ。



f0344554_10540646.jpg
f0344554_10543743.jpg
f0344554_10543836.jpg
山頂部はなだらかに長い。
小ピークを一つ越える度にまだかまだかと気持ちが逸るようになる。



f0344554_10543976.jpg
f0344554_10543928.jpg
山名は「八紘一宇」が由来とするとするものと、「八方が俯瞰できる嶺」という事から命名されたとする二つの説があるようだ。
前者は日本書紀の「八紘を掩(おお)いて宇(いえ)となす」による。
意味は「世界を一つの家にしよう」というもので、第二次大戦中旧日本軍が国家の理念として打ち出し、海外進出を正当化するスローガンにも使われた。
後者の方が山屋としては嬉しくもありしっくりとくる。



f0344554_10543753.jpg
f0344554_10550704.jpg
f0344554_10550878.jpg
振り返ると登り始めた梅ヶ島温泉が谷間に小さくなっていた。
その後も緩やかなアップダウンは続く。



f0344554_10550833.jpg
f0344554_10550952.jpg
f0344554_10550740.jpg
植生が大変に豊かである。
ブナ・ヒメシャラ・ミズナラなどが混在しており紅葉の頃にはさぞ素晴らしい登山道になるのだろう。



f0344554_10553855.jpg
f0344554_10553924.jpg
その後も幾つかの小ピークに裏切られながら平坦な登山道を進む。



f0344554_10553963.jpg
すると突然、目指す頂が目の前に現れあっけにとられた。



f0344554_10554054.jpg
f0344554_10553772.jpg
f0344554_10560846.jpg
12:10、山梨百名山99座目、「八紘嶺」(1918m)登頂。
残念ながらガスが強く、楽しみにしていた山名由来となった大展望への願いは叶わなかった。
しかしそれ故、山頂標の一文字一文字が愛おしく思えた。



f0344554_10560832.jpg
いずれ七面山へも繋げてみたいし、大谷嶺を含めた長い周回ルートも歩いてみたい。
何と言っても、周囲の殆どの山々が山座同定できない山域なのだ。
地図を眺めることが新鮮であり実に楽しい。
シロヤシオも見事だと教えて頂いたので五月になるのが今から楽しみだ。

再び訪れたいと強く願う、忘れ得ぬ八紘嶺である。




f0344554_10560938.jpg
山頂で休憩していると山伏を案内して頂いたH女房さんから連絡があった。
下界の清水は猛暑となっていたそうで、こちらの気温が15℃で寒いと伝えるととても驚いていたことを良く覚えている。
山梨百名山99座目の登頂を祝福して頂いた。



f0344554_10560604.jpg
諦めきれずパンをかじりながらガス抜けを待ったが願いは叶わなかった。
12:50、離れがたい山頂を後にした。



f0344554_10562258.jpg
八紘嶺の登頂により、南部のピースが遂に埋まった。
しかしその達成感とは裏腹に、山梨百名山の終わってしまうことが寂しくて仕方無くもあった。



f0344554_10562388.jpg
山伏山行の際、H女房さんから面白い話を教えて頂いた。

八紘嶺に隣接する「大谷嶺」のことを、古来山梨県側では「行田山」と呼んできた。
山頂は山梨県早川町と静岡県葵区との境界にあり、早川町の立てた立派な標柱が立っている。
しかしその標柱の山名は削り取られ、マジックで「大谷嶺」の文字が書かれているのだそうだ。
どのような心理が働いたのかは容易に想像することが出来るが、測量士では無い登山者にとって、山名などはどうでも良いことのはずだ。
コンパスを当て地形図を読み、自身の目指した一点と重なった場所が登山者の山頂だ。

三角点だけが置かれているピークに人知れず立ち、幕営後に下山するような静かな山行が私は好きだ。
ただ、この頃になるとピークハントを主としたスタンプラリーも登山の楽しみ方の一つなのだと理解できるようにもなっていた。
登山の楽しみ方は人それぞれで良い。
ただ、人と競い合ったりいがみ合ったりすることは実に見苦しい。



f0344554_10562454.jpg
f0344554_10562243.jpg
思うように行程が組めず、この一座も短いルートを利用して歩いてしまったが、安倍奥の山々には強く惹かれるものがある。
うまく言えないが、人間臭い古の人々の気配を至る所で感ずることができるのだ。
おそらく数多くの廃道があるのだろう。
再訪の折には、またHさんご夫婦に案内をお願いしてみようと思っている。
きっとマニアックな素晴らしいルートを選んでくれることだろう。



f0344554_12175267.jpg
f0344554_12182248.jpg
下山後は梅ヶ島温泉で汗を流した。
ほのかな硫黄臭漂うとろとろの素晴らしいお湯だった。



f0344554_10564705.jpg
f0344554_10564649.jpg
6月中の山梨百名山完登を目指して駆け足で進んできたが、日数不足により諦めるしか無いことが決定的となってしまった。
少し残念でもあったが、自分なりの最高のフィナーレを飾ることを改めて心に誓い、帰路についた。

この山行を以って、長くも短かった人生の夏休みが終わりを告げた。
七月からは新しい生活が待っている。
人生の分岐点となった八紘嶺は私にとっての特別な一座となった。
次にこの山を訪れる時、どんな気持ちになるのだろうか。

山梨百名山完登まで、あと一座である。


おしまい。


今回も最後までお読みいただきまして大変ありがとうございました。


↓励みになりますので、よろしかったら『ぽち』っとお願い致します(^^)/


by yama-nobori | 2017-01-09 20:30 | 登山 2016 | Comments(0)
名前
URL
画像認証
削除用パスワード
<< 再会の深田百名山@丹沢山 20... 安倍川流域の最高峰@山伏 20... >>