激藪の弘法小屋尾根④@間ノ岳 2016.10.15(土)~16(日)



f0344554_17485163.jpg
間ノ岳山頂を目指す第四部のスタートとなります。

※編集時間の関係上、細切れの記事になってしまい申し訳ない....





f0344554_17492131.jpg
幕営適地を求め、まずは2935Pを目指す。
程なくしてハイマツの中に新しい支点を発見。



f0344554_17492272.jpg
覗き込むと岩稜の痩せた尾根が落ちていた。
岩は脆そうでまずまずの高度感だ。



f0344554_17492358.jpg
南側にはハイマツがあるので即重大事故に繋がるとは思えなかったが、北側に落ちたらただでは済みそうにない。
剥がれ落ちるホールドを押さえ込むように握り、足場を探して確実に下る。



f0344554_17492482.jpg
着地点のハイマツが相変わらず煩かった。


f0344554_17492016.jpg
乗り越えてきた岩峰を振り返る。
高さは6~7m程であろうか。
八本歯をフリーで下りるようなやや危険な通過点であった。

冬季バリエーションにおいては最大の難所になるのではないだろうか。
しかしこの時期の核心部は別にある。
そう、言わずと知れたハイマツの海だ。



f0344554_17493684.jpg
難所を越えても奴らは続く。


f0344554_17493750.jpg
ハイマツ臭を全身にまとい、再度振り返って改めて思う。
うん、ラッセルの方が楽だよね...。


f0344554_17493802.jpg
f0344554_17493851.jpg
さほど大きなアップダウンでは無かったはずなのに、いざ取り付いてみるとご覧の有様だ。



f0344554_17500712.jpg
しかしやっとの思いで小ピークに上がると、夢の様な幕営適地が現れた。
平坦であり、枯れたハイマツが堆積しているのであろうか、地面がふかふかと柔らかい。
こんな場所が尾根上にあるなんて信じられなかった。



f0344554_17500832.jpg
f0344554_17500693.jpg
f0344554_20581079.jpg
極上の展望だ。


f0344554_17500888.jpg
しかしこの先に難所がないと誰が保証してくれようか。

明日は暗い内からのスタートだ。
ここまでに通過してきたような岩稜帯を暗い中で進むべきではない。
それに、起き抜け早々からハイマツの海で泳ぎたいやつがどこにいるものか。

13:53、極上ベッドをあとにした...



f0344554_17500602.jpg
f0344554_17503679.jpg
f0344554_17503750.jpg
f0344554_17503885.jpg
案の定だった。

かなり背丈は低くなったものの、実にしつこいハイマツ達だ。
靴紐の輪に枝が入り込み何度も転けそうになった。



f0344554_17503840.jpg
f0344554_17503623.jpg
同じような景色がいつまでも続く。
弘法小屋尾根は確実に伸びているはずであったが、この頃になると進んでいる実感が持てなくなりはじめた。



f0344554_17510744.jpg
f0344554_17510703.jpg
f0344554_17510827.jpg
しかし前方に視線を向ければ、あれほど遠かった3000m稜線が屏風のように大きく、そして間近に見えるようになっていた。
確実に前へと進んでいることを実感し、振り返ることを止めた。



f0344554_17510973.jpg
f0344554_17510696.jpg
地形図には現れない痩せ尾根のアップダウンとハイマツ達はなおも続く。



f0344554_17513772.jpg
やがて前方にやや大きな岩峰が現れた。
良く見てみると、その向こうに痩せ尾根の末端が見えている。



f0344554_17513995.jpg
f0344554_17513818.jpg
f0344554_17513664.jpg
ハイマツ達の背丈も随分と低くなった。
これならもう、ヘッデンでの登攀もそう難しくはないだろう。



f0344554_17520847.jpg
f0344554_17520860.jpg
幕営適地を探しながら岩峰に取り付いた。
あまり稜線と北岳には近すぎず、甲府の夜景や月明かりに浮かぶ富士山の見える平坦地...



f0344554_17520901.jpg
f0344554_17520784.jpg
f0344554_17521010.jpg
しかしそんな都合の良い場所は現れない。
気付けば標高2935Pの岩峰を過ぎていた。



f0344554_17523836.jpg
f0344554_17523993.jpg
f0344554_17523932.jpg
f0344554_17524042.jpg
その後も痩せ尾根は続き、やや急な15m程の下りに取り掛かる。
時間はまだ早かったが、間ノ岳に太陽が隠されはじめた。



f0344554_17523742.jpg
15:00、実は時間も早かったためにこのまま稜線に立ってしまおうかとも考えた。

しかしどうしても、モルゲンに染まる細川カールを眺めてみたかった。
既に稜線に近づきすぎてしまってはいたが、この場所ならまだなんとかなる。
明日は行程の途中でその時を迎えることができるだろう。

15:07、狭いコルのような場所を整地し90cm四方の平坦地を作った。



f0344554_17531491.jpg
15:20、苦労しながらもツェルトを張り終え、この日の行動を停止した。

ネットで探せば、おそらく幕営適地の情報は画像付きで事前入手することができたことだろう。
しかしそれを潔しとしないのは自分のこだわりだ。
過剰な情報収集は登山をつまらないものにする。
最近では事前の情報収集を怠ることを「悪」とする風潮があるようであるが、観光案内のような地図に記載されたCTも含め、そこにあるのは所詮他人のつけたトレースだ。
藪山山行にそんなものは必要ない。
バリエーションを歩くからには、地形図と先人の言葉だけを頼りに進みたい。



f0344554_17540480.jpg
およそ快適とは程遠い寝床が完成した。

背中面のみがフラットで、膝は直角に曲げることができる。
幕内に掘り炬燵を作ったのは初めての経験だ。
座っている分にはこの上なく快適であるが、眠れる気が全くしない...

あの2800m付近のふかふかベッドが懐かしかった。



f0344554_17531471.jpg
f0344554_17540669.jpg
しかし掘り炬燵との引き換えに手に入れたものは大きかった。
前方には200m程の急斜面と岩峰帯が見えてはいたが、ここまでの行程を思えばなんてことはないだろう。



f0344554_17531218.jpg
明るい内に明日のルート取りを検討して幕へと潜り込む。

気温は1℃と暖かい。
風がやや出てきたが、吹いているのは滝ノ沢カール側であり、ツェルトを張った細川カール側は無風のままだった。



f0344554_17540443.jpg
f0344554_17540513.jpg
展望もまずまずだ。


f0344554_17531359.jpg
f0344554_17540383.jpg
17:01、やや早い夕食を済ませ読書を楽しんだ。

日が暮れると甲府の街灯りがちらちらと瞬きだし、月明かりに青く浮かび上がった細川カールの直上には満点の星が輝き始める。
ツェルトを通して月明かりが落ちてくる。
ヘッデン不要な明るい夜だった。
秀峰に抱かれ飲む酒が実に美味い。

最低気温は-1℃で下げ止まり。
この時期としては驚くほどの温かい夜である。

それにしても掘り炬燵で足を下ろして眠れるのだろうか...
さぞ長い夜になるだろうと覚悟していたが、夜中に何度か目を覚ます程度で十分な睡眠をとることができてしまった。
これではあの近所の変態と大差ない



f0344554_17545709.jpg
4:00、起床。
ゆっくりと朝食を食べ撤収を済ませた。


f0344554_17545783.jpg
4:50、標高2930m付近をスタートする。



f0344554_17545881.jpg
f0344554_17545995.jpg
f0344554_17545683.jpg
やや雲があるが、快晴無風。
標高3000m付近に現れたしつこいハイマツを踏んでいると、北岳山頂にヘッデンが光った。



f0344554_17553985.jpg
f0344554_17554533.jpg
05:09、3000mの平場に辿り着いた。
ここまで来てしまえば急斜面を詰めるだけだ。



f0344554_17554644.jpg
f0344554_17554790.jpg
昨日確認した時点では岩峰は巻くつもりでいた。
しかしこれがもう最後の大きな登りになるんだと思うと、俄然闘志が湧いてきた。

全て直上を進むことにし、脆い岩峰に取り付いた。



f0344554_17560919.jpg
5:35、岩峰トップからその時を待つ。



f0344554_17561172.jpg
昨日2900m付近でビバークしたのは、モルゲンに染まる細川カールを間近で眺めるためだった。

しかしここまで登って来ると、その対象は別のものに移ったようだ。
そう、歩き通した弘法小屋尾根の染まって行く様を眺めたくなったのである。



f0344554_17561189.jpg
太陽の昇る前のほんの僅かな時間、北岳上空の雲が美しく色づいた。
息を潜めて秀峰達と共にその時を待つ。


f0344554_17561241.jpg
f0344554_17560989.jpg
5:41、太古から変わることのない、いつもと同じ平凡な太陽が昇る。
しかしちっぽけな私にとっては、いつだって特別な瞬間だ。
この瞬間はもう二度と訪れることはない。



f0344554_17563957.jpg
f0344554_17564160.jpg
イメージ通りに燃え上がる美しい秀峰達に息を呑む。



f0344554_17564228.jpg
弘法小屋尾根が身をくねらせ谷底へと向かい落ちている。
これほどまでに力強い光ですら、尾根の末端に届くまでにはあと数時間を要するだろう。

そこから這い上がってきたのだ。
明暗が美しく、そして誇らしかった。



f0344554_17571205.jpg
f0344554_17571141.jpg
f0344554_17571161.jpg
5:53、標高3100m付近の岩峰から歩き始める。
残す標高差は100mを切った。



f0344554_17574069.jpg
f0344554_17574140.jpg
弘法小屋尾根を離れると北岳はすっかり見慣れた姿となった。



f0344554_17574277.jpg
f0344554_17581188.jpg
ここまで来れば国内最長となる3000m稜線はもう目の前だ。



f0344554_17581257.jpg
f0344554_17581207.jpg
f0344554_17584138.jpg
f0344554_20423961.jpg
ついに主稜線に乗る。
その時だった....



f0344554_17584336.jpg
登山者がいる....


f0344554_17584229.jpg
今回のピークは、一般道を認めたまさにこの瞬間だった。
弘法小屋尾根を振り返ると涙が溢れ出た。


f0344554_17583945.jpg
f0344554_17591038.jpg
f0344554_17591180.jpg
一般道からやや外れた線状凹地を利用し、登山者から隠れるようにして山頂へと向かう。



f0344554_17591233.jpg
f0344554_17591283.jpg
ゆっくりと、噛みしめるように歩き一般道へと合流。



f0344554_17591003.jpg
顔をあげると青空に映える白い山頂標が間近にあった。



f0344554_17594012.jpg
f0344554_17594013.jpg
6:13、国内第三位の高峰「間ノ岳」(3189.5m)登頂。
新しくなった山頂標を見たのはこの日が初めてだった。



f0344554_17593983.jpg
相性の悪い間ノ岳ではあるが、この日は文句なしの大晴天。
あまりに嬉しかったので滅多に行わない自撮りを敢行して一人照れた。

その間数人の登山者が訪れたが、皆簡単に記念撮影を済ませ足早に農鳥岳へと流れて行く。
やはり間ノ岳はつくづく不遇な一座だと思う。

しかし今回は、とびっきりのねちっこい温かい視線をこの間ノ岳に注いできた。
南アルプス北部において、遠方からもっとも山座同定することのできるのがこの間ノ岳だ。
ということは、逆もまた然りなのである。

登頂の余韻に慕ってしばらく景色を楽しんだ。
次回からはようやく高山らしい写真をお届けできそうだ。

だってもう藪には飽きたでしょう?



第五部の記事へはこちらからどうぞ。



↓励みになりますので、よろしかったら『ぽち』っとお願い致します(^^)/


by yama-nobori | 2016-10-25 19:50 | 登山 2016 | Comments(2)
Commented by sugishoo at 2016-10-26 09:31
おはようございます、ゆたかさん
執拗なハイマツとの苦闘、よくぞ耐え抜かれましたね!
日の出前の燃え上がる朱色の山々、素晴らしいですね!
写真を見ても感動しますから、現実はもっと凄いでしょうね!
Commented by yama-nobori at 2016-10-30 22:12
> sugishooさん

お久しぶりです!
ようやくの3000mオーバーの記事になりました。
最近はマイナーな低山ばかりで申し訳ないw

現実はこれに風の音や、キリッとしまった空気が加わりますからね。
一生懸命その場の空気を切り取ろうとするんですけど、素人にはこの程度が精一杯です....。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード
<< 激藪の弘法小屋尾根⑤@間ノ岳 ... 激藪の弘法小屋尾根③@間ノ岳 ... >>