古代ロマンを秘める山@白鳥山 2016.06.10(金)



f0344554_21564245.jpg
白鳥山(しらとりやま)は、山梨県南巨摩郡南部町にある標高567.7mの山である。
南アルプス最北端、鋸岳で生まれた釜無川は富士川へと名を変え、長い旅路の果てに駿河湾へと流れ着く。
甲府盆地内では信玄の手を焼かせ、「釜を洗おうとするとすぐに流されて無くなってしまうから」とその名が付けられた暴れ川も、富士川と呼ばれるようになる頃にはすっかり緩やかとなり、静岡との県境にあるこの独立峰で行く手を阻まれ、大きく流れを変える。
山梨百名山の中で、最も標高の低い「白鳥山」ではあるが、富士川からの標高差は500m程もあり、山容は三角に尖り標高よりもずっと大きく見える一座である。





f0344554_21564669.jpg
f0344554_21564667.jpg
午前中に登頂を果たした「貫ヶ岳」と「白鳥山」は、直線距離に直すと4kmに満たない位置関係にある。
しかし今回のプランでは、白鳥山登山口まで30km程の移動が必要となった。
これは「高ドッキョウ」「貫ヶ岳」をセットにしたことによる弊害でもある。

山梨百名山を追うにあたり、この南部一帯の山は、ずば抜けてアクセスが悪いことは前述した通りだ。
その辺りのレポもこの先いくつかの記事でご紹介して行きたいと考えているが、その都度、それに見合うだけの充実感があれば良い山行であったと振り返ることができるであろう。

しかしである。

白鳥山の高低図を見て頂きたい。
何かを思い出さないだろうか....

今回もあの時と同様に無駄に熱く語って行こう。
こんなことばかりしているから、遅々として記事が進まない



f0344554_21565869.jpg
少しでもしっかりと歩きたい方は、「白鳥山本成寺登山口」を利用すると良い。
往復3.5km、2.5h程のハイキングを楽しむことが出来る。

しかし今回利用したルートは、標高520m程にある「白鳥山森林公園」を起点としたもので、山頂までの比高は僅か50mに満たない。
国道52号線(身延線)を外れゴルフ場(隨緑(ずいえん)カントリークラブ)に向かうと、「恋人の聖地」なる看板が導いてくれる。

ゴルフ場から山頂直下まで伸ばされている斜度の強い林道をぐいぐいと走り続けた。



f0344554_21565939.jpg
強い日差しの照りつける中、林道終点にある駐車場までやってきた。
ブログネタのため、数枚の写真を撮る。

先客は土木工事の作業員。
平日のクソ暑い中、この汗臭そうなおっさんは何しに来たんだと怪訝そうな視線を投げてくる。

まあ私自身「何やってるんだろう」と思っていたのでその視線を甘んじて受ける。



f0344554_21570005.jpg
なにやら「みどころ」があるのだそうだ。
しかしこの後更にもう一座、まずまずの山に登らねばならなかったので、用事があるのは山頂のみである。

11:59、クロックスに短パン+Tシャツ、カメラ片手に歩き始めた。


f0344554_21570029.jpg
来た道を少し戻ると登山口が現れる。

看板には「恋人の整地」「山梨百名山」の二つの文字がある。
一体どちらが著名なのであろうか。


f0344554_21565802.jpg
短いことは知ってはいたが300mとは驚いた。


f0344554_21570884.jpg
ここを訪れる山屋以外の「恋人たち」はどのくらいいるのであろうか...

この周辺にはめぼしい観光施設などはない。
北に行こうが南に向かおうが、1時間程度はやたらと飛ばしているトラックに煽られ続ける一本道だ。
そんなデートプランを立てた時点で他人同士になるのではなかろうか。

登山道(?)の整備は完璧だ。
但し、駐車場のトイレは汲み取り式であり、ジュースなどの自動販売機は無い。
詰めの甘い観光立村だ


f0344554_21570836.jpg
この山の価値を見出してくれるのは、中高年だろう。
わざわざニッチな相手をターゲットにしなくても良いと思うがいかがなものか。

さて、この種の山にやってくると、考えずにはいられないのがあの疑問だ。

「何故にここが山梨百名山に選ばれたのか」


f0344554_21570958.jpg
山梨百名山は、一般公募と市町村推薦であがった候補の中から、選考委員会によって、①県民に親しまれている・②全国的な知名度がある・③歴史や民俗との関わりがある、などの基準で選ばれたとされている。

「白鳥山」はどうか。

先に書いた通り、この山の尾根は富士川の流れを変え、川幅を狭めた要害の地である。
南北朝時代・戦国時代には、必然的に幾度かの合戦場となった。

最初に白鳥山を山城としたのは今川氏だ。
その後は武田信虎が駿河攻めの際に奪取し、武田衰退後は徳川軍が押さえている。
甲斐国志は、この城の取り合いの歴史を「城取山トモ云う」と書いている。



f0344554_21570922.jpg
しかし白鳥山のもつ歴史は更に古く、飛鳥・鎌倉時代にまでさかのぼることが出来る。
仏教帰依を巡り587年、蘇我馬子は反対する物部守屋を殺す。
この時、守屋の子、守彦とその家臣は東国へと逃れ、甲斐の海に近い場所を永住の地と定め「万座」「万沢」、この山を「白鳥山」と呼んだ。

白鳥の飛来伝説も残る。
鎌倉時代中期、一羽の白鳥がこの地に住み着いた。
以来、地鳴りや山崩れが次々に起きた。
白鳥はヤマトタケルノミコトの化身であると恐れた村人たちは南麓に白鳥天神を建て白鳥を祀る。
やがて白鳥は去り村に平穏が戻った。


f0344554_21570867.jpg
東国に点在している、物部氏・ヤマトタケルノミコト・白鳥信仰に着眼し、大和朝廷と熊襲、蝦夷が争った古代争乱の時代を読み解こうとしている「谷川健一」の「白鳥伝説」は実に興味深いおすすめの良著である。



f0344554_21572729.jpg
そんな古代ロマンを秘めた山も、現在では山全体が植林地であり、中腹にゴルフ場を抱え、山頂直下まで林道が伸びている。



f0344554_21572776.jpg
緩やかに登って行くと、やがて山頂が見えてきた。



f0344554_21572821.jpg
12:05、「白鳥山」(567.7m)登頂。
僅か6分の行程であった。

山頂標識の横に何やら建てられている。
墓標にしか見えない
供養のために鐘を鳴らした


f0344554_21572885.jpg
ん?これはカメラスタンドか....



f0344554_21572717.jpg
こんな風にして使うんだろうか....
顔のでかいおっさんには、ここに二人で収まるなんて想像も出来ない。

「恋人の聖地プロジェクト」というものがある。
NPO法人地域活性化センターから、交際やプロポーズのきっかけになる場所として登録された「恋人の聖地」は全国に100箇所ある。

けれど...くどいようではあるが「恋人たち」はやってくるのであろうか。



f0344554_21573512.jpg
f0344554_21573506.jpg
この山頂標識は初めて見るタイプのものであった。
青い文字で「白鳥山」と書かれている。



f0344554_21574451.jpg
まずまずの広さがあり、テーブルやベンチがあった。



f0344554_21573480.jpg
生憎ガスの多い日であったが、展望は抜群であるようだ。

この場所から撮影した冬の南アルプスを見たことがあるが、それはそれは素晴らしいものであった。
南には駿河湾、北には富士川、御坂山系、天子山塊を眺めることができる。
流石はかつて物見台と呼ばれていた戦略拠点、「白鳥山砦」だ。

言うまでもなく富士山もでかく、晴れていれば墓標ハートの先に富士がそびえる。



f0344554_21574396.jpg
f0344554_12035384.jpg
南部の山には詳しくないので、左奥でガスに覆われている「篠井山」、富士川を挟んだ「思親山」以外、山座同定することはできなかった。
冬の晴れた日に再び訪れて確認してみたい....が、この一座の為に訪れることがあるか否かは甚だ怪しいというのが正直なところである。



f0344554_21574316.jpg
12:17、下山開始。
もう二度と訪れることの無いかもしれない山頂を振り返る。



f0344554_21574437.jpg
f0344554_21574940.jpg
さあ、次の山はまずまずの大物だ。
移動距離も長めなので、こんなところでもたもたしてはいられない。

しかしこの時、あることが気になって仕方がなかった。
本気で中止しようかとも思っていたくらいだ。

そう、次の一座は奴らの巣窟なのである。
山梨百名山の中では屈指のヒル山であり、木からポタポタ落ちてくるので傘をさす登山者もいると聞いていたからだ。
あの「高ドッキョウ」を越えるヒル山とは如何なるものなのか。


うううっ...



おしまい。

今回も最後までお読みいただきまして大変ありがとうございました。


↓励みになりますので、よろしかったら『ぽち』っとお願い致します(^^)/


by yama-nobori | 2016-08-27 12:34 | 登山 2016 | Comments(2)
Commented by sen230727 at 2016-08-27 18:30
ハートマークの間から晴れていれば富士山が見えるのでは?山梨百名山に選定されたのは、
③の歴史と民俗に関してでしょう。私の登山対象の歴史の山百選には選定されていません。
残念でした!ヒルがいなくて良かったですネ。問題は次の山ですか。ヒルが昼寝している
のを祈ります。
Commented by yama-nobori at 2016-08-28 15:01
> sen230727さん

ブログを読んで頂いている方から、あれは顔を出すところじゃないんじゃないかと、指摘を受けました(笑)
なるほどと思い、とっても恥ずかしかったです(^^;

「歴史の山百選」!
面白そうですねぇ(^^)
名前
URL
画像認証
削除用パスワード
<< 思いが育てた登山道@篠井山 2... ヤマビルの猛攻②@高ドッキョウ... >>