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西尾根バリエーション①@霞沢岳 2016.04.09(土)



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霞沢岳(かすみざわだけ)は、飛騨山脈南部に位置する標高2,646 mの山である。

常念山脈の最南端にそびえる霞沢岳は、不遇の山であると言われることも多い。
何故なら上高地を訪れる登山者の多くは穂高連峰に目を奪われてしまい、背後にそびえているこの山の存在に気付かないからだ。
深田久弥も後記の中で「日本アルプスで当然選ばれるべき山のひとつだった」と述懐しているのは有名な話でもある。

北アのブランド山には全く魅力を感じない私でも、この歴史ある不遇の山には強い憧れを抱いてきた。
しかし観光客にまみれ、上高地から徳本峠を経由したのでは、静かで山と語り合うような登山をすることは出来ないとも考えていた。
山歩きを始めた頃から憧れている島々宿からのクラシックルート、もしくは今回のバリエーションからの登山こそが、この霞沢岳には相応しいのだと昔から決めていたのである。





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西尾根への取り付きは、上高地へと続く釜トンネルを抜けたその先にある。



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4:15、「坂巻温泉」(1216m)から1.8km先にある釜トンネルを目指し歩き始めた。



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未だ上高地へ行ったことのない私は、今回が初めての釜トンネル通過である。
この冬には、上高地で写真撮影とテン泊を楽しみ、蝶ヶ岳へも足を伸ばしてみようかとも考えていた。
しかしあまりにも雪が少ないようなので止めてしまった。
一体いつになったら上高地へ行けるのか…。



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今回のお供はK嬢であるが、霞沢岳へ向かうのは私だけである。
K嬢は静かな上高地でのんびりしてくるのだそうだ。

長い長いと聞いていた釜トンネルであったが、1310mしか無いことを知り拍子抜けしてしまった。
人の歩くことのできるスペースまであり、流石は観光地仕様のトンネルだと感心した。



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釜トンネルを抜けた後は更に1km程林道を進む。
やがて焼岳が近づいてくる。



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国土交通省の看板が目印となる。
西尾根への取り付きは、ここを右へと向かう。



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5:20、K嬢とは一旦お別れとなる。
上高地楽しんできてね!



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分岐を100m程進むと左側にフィックスの張られた急登が現れる。
ここが標高1530mの取り付き点だ。

積雪で道が隠れている場合には、尾根上の電線を目印にすると良いであろう。



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登り切った後は、ただひたすら東に向かって尾根を進んで行く。

もう少し早い時期に訪れていれば笹薮は雪の下となり歩きやすかったはずだ。
しかし今年の雪の少ない残雪期においては、写真通りの笹薮漕ぎが延々と続く。
少々訪れるタイミングが遅かったようだ。



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登りに関して言えばルートは単純だ。
尾根を外さないよう上を目指し、ただひたすら藪を漕ぎ続けるだけで良い。

笹の高さは概ね背丈ほどあるので、朝露などがついている場合には予めレインを着ておくと良いだろう。



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ただ厄介であったのは、地面の状態である。

正規ルート(?)に乗ると踏み固められた雪がアイスになっている。
かと言ってアイゼンをつけてしまうと、ルートを外した際に笹が引っかかり転倒の恐れがあった。

ツボ足のまま敢えてルートを外しながら尾根を突き上げて行く。



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40分程の激笹藪漕ぎが続き、その後、笹の背丈が低くなった。
北側の開けた場所からは上高地方向を見ることができた。

西尾根の全てでdocomoのキャリアを拾うことができた。
流石は観光地だ。
K嬢とはリアルタイムに連絡を取り合うことが可能であった。



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足元のアイスに注意しながら尾根を詰めて行く。



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やがてツボ足のままでは対処の難しい場面が増えてきた。
一度派手に転んで太ももを強打した。



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笹が消え始め、ほぼ樹林帯となったところでアイゼンを装着する。

そして事件が起きた。



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アイゼン装着時、木に立てかけておいたザックを谷底に転落させてしまったのだ。

どんどん加速し、転がりながら落ちて行くザックをただただ呆然と眺めていた。
やがて姿が完全に見えなくなり、落下音も聞こえなくなった。

気持ちを落ち着かせ回収に向かう。



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谷は深かった。

下降を始めるとまず5m程の垂直の崖が現れた。
アイゼンの前爪がなんとか岩にかかったので、ホールドを探しながら強引にクリアする。

次に現れた急斜度の雪面は、両手を雪に差し込みながらクライムダウンを行った。
ピッケルはザックに括りつけてあったため装備する事ができなかったのだ。

必死で下り続ける。
やがて斜度が緩んできたがザックは見当たらない。



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なおも下り続けると、ザックに入れていたパンが散乱していた。
これを回収しさらに下ると、奇跡的に倒木に引っかかっていたザックをようやく発見することができた。

時計の標高計は200m下がっていた。


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ヘルメットとピッケルを装着し登り返しを行う。

先程強引に降りてきた左の崖は巻くことが可能であることがわかり安堵する。
回収を終え元の場所に戻った時には、しばらくの間へたり込んでしまった。

そして水を飲もうとして愕然となった。
水を入れていた500mlのペットボトル2本が見当たらないのである。
ザックから飛び出して転落したのであろう。

以後水無しでの山行となった。


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木々の間から穂高が見えるようになって来た。

尾根がやや広くなってきたので位置を確認しようとGPSを探すが見当たらない。
ザックのウェストポケットが半開きになっていた。

あぁ....落としてしまったのか。

後に友人からは、「自身の身代わりになって落ちてくれたんだ」と言われ、そう思うことで納得することができた。
確かに確保ツールの無い危険な下降ではあったし、ザックが停止したのも奇跡的なことだと思う。
不幸中の幸いだった。



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徐々に積雪量が増え、尾根へと向かうトラバースでは踏抜きが始まった。
深いところで股下まで沈み、引く抜く度に体力が削られる。

しかし水に飢えていたのでこの柔らかい雪はとても有り難かった。
口に含むと少し泥臭かったが俄然気力が蘇ってきた。



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徐々に視線の先が明るくなり始める。



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じりじりと標高を上げて行くと木々の密度が低くなる。

8:00、樹林帯の中にようやく朝日が落ちてきた。



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やがて南側の視界が突然開ける。

これには思わず感嘆の声を上げ、夢中でシャッターを切った。
見えているのは乗鞍岳である。


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次は何が見えるのであろうかとペースが上がる。



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乗鞍岳は益々美しくなり、取り付き点から見上げていた焼岳は、既に視線の高さと同じになっていた。



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硬い雪稜のトラバースを進んでいると、核心部となる岩稜が見え始めた。

森林限界となる。



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ようやく北側の視界も開けると、穂高が堂々とした姿を見せるようになる。
この角度からの眺めは、六百山と霞沢岳からしか得ることの出来ない貴重なものだ。



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核心部の岩稜にはフィックスが張られていた。
しかし既に雪も無いため豊富なホールドを使ってなんなく登ることができた。



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岩稜トップから登ってきた西尾根を振り返る。
焼岳が印象に残る素晴らしい尾根筋だ。



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穂高の下には上高地が良く見えていた。
まるで鳥になった気分だ。



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白銀に輝く乗鞍岳が、青空のもと裾野をのびのびと広げている。
3000m峰はまだまだ冬山の装いだ。



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山頂は近そうだ。

少し標高をあげると見えるものがどんどん増えて行く。
先に進むのが惜しくなり、更に周囲の展望を撮影した。



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昨年の同時期に登った焼岳は、とても良くまとまった山容をしており青空に映えている。
今年のガスは少ないようである。
肉眼では、左肩奥に白山も見ることができた。



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笠ヶ岳~抜戸岳の稜線が清々しく引かれている。
霞沢岳からのこの展望は、特筆に価すのではなかろうか。



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昨年は長い間敬遠し続けていた奥穂高岳にも登っている。

結果、岩稜のブランド山にはどうにも魅力を感じないことを改めて認識した。
次に触手が動くのは何年後なのであろうか...。
少なくとも登山ブームが去るまで近寄ることはないだろう。



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さて、そろそろ進んでみるか。


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やがて北東方面の視界も開け、大天井岳~常念岳~蝶ヶ岳が見えるようになる。
あまりに雪のない黒々としたその姿に驚いていると、視線の先に高いところが無くなっていることに気がついた。

雪庇とクラックに注意しながら、その場所を目指して歩を進める。



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9:05、「霞沢岳」(2646m)登頂。

ザック回収の無駄な時間が含まれてしまったが、取り付きから3時間40分で登頂することができた。



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しかし実はこの時、山頂の銘板が無かったために、ここが山頂であるのかハッキリせず心から喜ぶ事が出来ずにいた。

どうにも前方の岩稜の方が高い気がしてならない。
SNSで確認の依頼を行い、懐かしい常念山脈をぼんやりと眺めてその返事を待った。

後にわかったことであるが、前方の岩稜はK1・K2ピークであった。



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その後支柱の根本に銘板らしきものが埋まっていることに気がついた。
5分程かけて掘り出してみると「霞沢・・」の文字が見えた。

SNSでもここが山頂で間違いないと返事を頂戴してようやく安堵する。

すっかりGPS頼りの登山が身についてしまっている。
情けない話だ....。


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気温は+2℃、風はやや強め。

ようやく安心してパンを食べた。
山頂の雪は匂いもなくとても美味しかった。



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雷鳥の声が聞こえたので周囲を見回していると、支柱近くのハイマツに何やら置かれていることに気がついた。



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取り出してみると、それはなんと銘板であった。
積雪に備え、徳本峠小屋の方が取り外しておいたのであろう。

お借りして写真を撮った。
うん、この方が絵になるな。



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雷鳥の姿を見ることは叶わなかったが、彼らの声で山頂らしい写真を残すことが出来た。
満足だった。

元通りに銘板を戻し下山準備にとりかかる。



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北アルプスの山々も随分と同定することが出来るようになってきた。
食わず嫌いはいけないからと、昨年はかなりの時間を北で過ごした。

さて、次はどこに登ってみようか。
その頂からこの霞沢岳を眺め返すのが今から実に楽しみだ。
六百山から間近に迫る穂高を眺めるのも良いかもしれないな。

2時間もあれば十分に下りることが出来るだろう。
最後に霞沢岳からの展望を目に焼き付け下山を開始した。

しかしこのあと、西尾根からの下山はそんなに生易しいものではないということを、嫌というほど思い知らされることとなった。



第二部へと続きます。


今回も最後までお読みいただきまして大変ありがとうございました。

おしまい。



↓励みになりますので、よろしかったら『ぽち』っとお願い致します(^^)/


by yama-nobori | 2016-04-13 09:38 | 登山 2016 | Comments(2)
Commented by らは at 2016-04-14 00:40 x
霞沢岳は焼岳や穂高方面の展望抜群の山ですよね。何年か前の秋、新島々からやりました。
上高地が、お初とのことで「極秘」情報を。中の湯温泉まわりは駐車規制が厳しいです。
沢渡に駐車してバスを待つと時間がかかるので最近はこうしてます。
①今回行ったかもしれませんが、坂巻温泉で1日500円で停めさせてくれます(超オフレコ!)
 http://air.ap.teacup.com/yamayama/277.html
②安房峠線が開通したら、中の湯上部の登山口広場に駐車できます。
 http://yamanidemo.blog.jp/archives/42379289.html 昨年やりました。参考にしてください。
Commented by yama-nobori at 2016-04-17 10:38
らはさん、お返事が遅くなりました。
ごめんなさい。

新島々から歩かれたんですね!
かっこいい(^^)/

今回は坂巻温泉を利用しました。
ここは穴場ですよね、混んでいるのは見たことはありません。
車中泊も快適です。

中の湯上部の登山口広場は焼岳の時に利用したことがあります。
レコ読まさせて頂きます(^^)
情報ありがとうございました!!
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