第一部の記事へはこちらからどうぞ。 吐き出す息は流石に白いが、気温は高く無風快晴の朝だった。 「その時」に相応しい場所を求め、薄い道型を下げて行く。 徐々に明るくなる空に焦りを感じ梢の先へと目を向けた。 すると双耳峰の美しいシルエットが間近にあり、いよいよ逸る気持ちが抑えきれなくなった。 展望を遮る周囲の木々がもどかしい。 乗ったばかりの白峰南嶺の主稜線を二人で駆け下る。 気づけばいつの間にか一般道と合流し、足元はすっかり明瞭なものとなっていた。 下り続けて行くと両側の切れ落ちた、やや強い傾斜地形が現れた。 北への展望は無い。 しかし、あの日見ることの叶わなかった眺望が西にあった。 聖岳と上河内岳が淡い時間に息を潜める。 「ここに決めましょう。」 日の出までの僅かな時間、あの濃厚だった山行に思いを馳せた。 ランカン尾根の記事へはこちらからどうぞ。 登山を趣味として本当に良かったと思える瞬間だ。 素晴らしい時間だったね。 しかし、給水することなくこれを通過した。 T氏は疲れを感じさせない安定したペースで先行して行った。 息を整えるために何度も立ち止まる。 そのたびに、変化していく美林を切り撮った。 この日、別ルートから先行している友人との待ち合わせがあった。 山頂での待ち合わせ時刻は07:00ジャスト。 これより尾根は急勾配の登り返しとなる。 しかし再び開けたこの眺望を無視して山頂を目指すような無粋な真似は、我々には到底できなかった。 荒川岳。 聖岳への稜線。 ほんの数日前、あの稜線上に私はいた。 私は到底着いて行くことなどできず、やや藪の煩い登山道でぼてぼてと後を追う。 すっかり遠くなった偃松尾大黒尾根を写真に収め息を整えた。 「遅刻っすね。」 T氏の言葉、そして想像を遥かに超えたいくつもの視線を全て無視。 歓喜の雄叫びをあげたままで展望に食らいつく。 小笊越しの富士。 奥には白峰三山~高嶺~鳳凰三山~辻山が青く浮かぶ。 奥には蝙蝠岳~塩見岳~仙丈ヶ岳。 青薙山の上には大無間山。 奥には黒法師岳~不動岳などの深南部。 上千枚、光岳~茶臼岳~上河内岳~聖岳~中盛丸山~大沢岳~赤石岳~荒川岳。 愛して止まない南アルプスの全てがここに収束していると言っても過言ではない。 この日、この時、この出会い。 笊ヶ岳バイアスは、合縁奇縁の奇跡をくれたのである。
by yama-nobori
| 2019-02-28 12:25
| 登山 2017
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