第三部の記事へはこちらからどうぞ。 9:50、若者を見送った後、我々も鋸山を目指して重い腰をあげた。 歩きはじめてすぐ「房子の涙」と呼ばれる凹地が現れる。 獣達のオアシスなのだそうだ。 しかし写真を見ても尚、ディテールがぼやけてしまう。 何を感じ、何を考えながら歩いていたのだろうか。 今でも本当にこの場所にいたのだろうかと思うほどに、現実離れした夢の中の風景に思えてならない。 地形図を眺め、まだしばらく繰り返されるだろう小ピークの数に、このルートの長さを知った。 久しぶりに現れたやや危険な通過点にはかなり緊張した。 気付けば鋸山が近くなっていた。 丸盆岳東尾根を思い起こす程の強い斜面を直登し、尾根へと復帰した。 どうやら獣道へ引き込まれたようだ。 流石は「鋸」の名を冠したことはある。 繰り返される痩せ尾根のアップダウンに疲れを感じ始め、最後の登りでは顎が出た。 山頂に到着すると、ここでも先程の若者が休憩を取っていた。 短いながらも楽しい時間を一緒に過ごす。 彼はこの後、我々と同じく山犬ノ段にある避難小屋へと向かうと言う。 再び3人揃っての写真を撮って頂いた後、足取り軽く出発する彼を見送った。 犬山段での夜を共に過ごすことができれば、楽しい時間となりそうだ。 早朝出発した黒法師岳~バラ谷ノ頭が、驚くほどに遠くなっていた。 12:27、「千石平」(1672m)に到着した。 素晴らしい展望があり、暖かい日差しと美しい笹原が「ここで寝ていけよ」と手招きをする。 H女房さんが 千石平から100m程下り千石沢のコルに到着すると、鋸山で別れた彼が水を採り戻って来るところであった。 この先の行程上にある水場は、犬山段近くの林道をかなり歩いた場所にあるのだそうだ。 そんなに離れた水場に行くのは正直億劫だった。 しかし、現時点2日分の水は十分に背負ってはいたが、下山までの行程はまだまだ長く、そもそも今日中に犬山段まで進める保証は無い。 場合によっては更に幕営する可能性もある。 戻った彼に水場の状況を尋ねると、3分程下ったところに太い水流があるという。 暫く悩んだが、延泊分の水を摂ることにした。 水場情報のお礼を言い、犬山段へと向かう健脚な彼を見送った。 緩やかに下る。 苔むした玉石が庭園のような美しい場所だった。 このまま千石沢を下ると林道にぶつかり、直に犬山段へ向かうことができる千石沢登山口がある。 しかし林道は崩落し、現在通行することは困難であるらしい。 かつて在ったのだという丸盆岳東尾根の林道と同様に、このような放棄されたそれがこの山域には至る所にある。 言い換えれば、これらの林道が見捨てられたお陰で、貴重な山域が守られたと言うこともできるのだろう。 千石沢まで降りてくると情報通りに流水があった。 塩ビパイプを加工した水汲みお助けアイテムが木にぶら下げられており有難かった。 1.5L程取水してコルへと戻る。 13:28、しばらく休憩し、千石沢のコルを出発。 更に重たくなったザックが辛い。 黙々とアップダウンを繰り返していると、途中、まだ遙かに遠い視線の先に、美しい笹原の平坦地が見えた。 あの平和そうに見える場所はどこなのだろうか。 犬山段まではまだまだ遠い。 目標の手前で幕営することを選択したら、Hさん御夫婦は許してくれるだろうか...。 やや下ると視界から平坦地が消えてしまった。
by yama-nobori
| 2017-05-21 07:46
| 登山 2017
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Comments(2)
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novice
at 2017-05-22 22:30
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ブログのアップお疲れ様です。
写真とおはなしが素敵で、無我夢中で読ませて頂きました。ついつい続きが気になりますが、ゆたかさんのペースでアップお願いします。気長にお待ちしております。 三ツ合分岐で、お茶を飲みながら歩いてきた山々を眺め、ゆたかさん御一行が到着するのを少し期待しながら、くつろいでおりました。 30分程まどろんでしまったが意を決して出発したのが14:40。もう少しうたた寝でもしておけば良かったと本日思いました。 嬉しくもあり、少々気恥ずかしいですが自分は「若者」ではないです。40代の初老です。
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yama-nobori at 2017-06-02 21:10
> noviceさん
その節は大変お世話になりました! 待っていてくださったんですね(^^)/ あれからヤマレコ、そしてTwitterでもつながることができて嬉しく思っています。 先日は笹山に登られていましたね! 私と趣味がバッチリ合いますw どっか登りに行きましょう!!
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