藪山讃歌【黒法師岳~房子山】③@南アルプス深南部 2017.04.30(日)~05.03(水)



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黒法師岳を出発する第三部のスタートです。

第二部の記事へはこちらからどうぞ。





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昨日と同じ2:30に目が覚めた。
3人揃って体調良好、気温-2℃、快晴で迎えた3日目の朝である。

撤収を済ませ山頂で朝陽を拝む。
梢越しではあったが、富士山の横から昇る太陽が嬉しかった。



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山頂をふらついていると、一際美しい雪山が見えていることに気がついた。
既に雪の消えた2000m級の山々とは存在感があまりにも違う。
見慣れぬ方角からの上河内岳~聖岳であった。



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5:07、黒法師岳を出発する。

この日の目標は、バラ谷ノ頭~房子山~鋸山~千石平~三ツ合山~山犬ノ段のロングコースである。
果たしてどこまで進むことが出来るだろうか。



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バラ谷ノ頭分岐に立つと、朝靄をまとった北西の峰々が視界いっぱいに広がった。



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丸盆岳と不動岳は既に小さくなり始め、目指す縦走路の先には「バラ谷ノ頭」が大きくなった。
雲海に影を落としているのは黒法師岳だ。



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山頂からは斜度の強い笹を一直線に下る。
薄いガスが、黒バラ平を舐めるように流れていた。



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幕営した山頂の笹はすっかり乾いていたが、風雨をもろに浴び続けた南西斜面の凍結は激しかった。
凍結した笹を掴み、滑る足元に気をつけながら、慎重に150m程標高を下げ降り立った。



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黒バラ平~バラ谷ノ頭が、今回の山行で最も楽しみにしていた行程だった。
朝露凍る、秘境の香り漂う笹原の平原をゆっくりと進む。



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バラ谷ノ頭手前には水場がある。
下降点を示す標識があるということだったので、地形図を頼りに前へと進む。



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しばらく進むと、二張の凍結したテントがあった。
爽やかな若者に話しかけると、昨夜は酷い風雪と急激な気温の低下で、一睡もすることができなかったと答えが返る。

風の通り道となる地形的な問題なのであろう。
やむを得ず行うこととなった黒法師岳でのビバークは大正解だったようだ。

彼にはこの後、数か所でお世話になる。



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地形図にある最後の小ピークを超えれば水場があるはずだ。



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水場への下降点を探しながら小ピークを超えたが、とうとう「バラ谷ノ頭」のコルが間近に迫る。
途中、下方向へと続く踏み跡をいくつも目にしたが、何れも獣道であり標識は見当たらなかった。



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荷物をデポし、探し直そうかと思いつつ狭いコルに降り立つと、そこに生えていた木で探しものを見つけることができた。
なるほど、地形図には現れない小さなコブを勘違いしていたようだ。

「水場があったよぉ~!」と御夫婦を呼んだ。



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水筒を持ち不安定な急斜面を下る。



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50m程下がると、冷たくてとても美味しい水が豊富にあった。

この先にある「千石沢」の水量が当てにできなかったので3L採った。
軽く感じていたザックが、再びズッシリと肩に食い込んだ。



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どうやら素晴らしい天候に恵まれたようだ。
6:38、大展望への期待を胸に、「バラ谷ノ頭」を目指して急登を這い上がる。



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見上げた行く手が限りなく美しい。
高度感ある笹原の斜面を振り返れば、早朝出発した黒法師岳からの縦走路が姿を変える。

これには堪らず何度も振返り、同じような写真を幾枚も撮った。



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「バラ谷ノ頭」、その素敵な名前の頂からは、どんな景色が広がるんだろうか。
中ノ尾根山、池口岳~加加森山~光岳、合地山などの山々が見え始めるようになった。



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斜度が緩むと、遂に山頂標が目に飛び込んだ。



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7:03、憧れ続けてきた「バラ谷ノ頭」(2010m)に登頂。
ザックを放り出し地図を広げる。



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燦然と屹立する黒法師岳の右手奥には、よく似た山容の前黒法師岳が見えている。
その両山の間の奥では、朝の光に朝日岳と秀麗富士が浮かぶ。



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丸盆岳の先に見えているのは上河内~聖岳、手前の光岳が大きい。



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中央アルプスと御嶽山、恵那山は優雅な裾野を広げていた。



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素晴らしい展望だった。
これほどまでに憧れを抱き続けてきた山は今まで無かったように思う。
まさに感無量であった。

本州最南端2000m峰からの展望を思う存分楽しんだ。



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7:30、次のピーク「房子山」を目指し、再び歩き始める。



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数分進むと「本邦最南2000mの地」と書かれた標識が現れた。
考えてみれば、近畿・中国・四国・九州には2000mを超える山は無い。

感慨深い思いで標識を撫で、その地を後にする。



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鹿道の濃い、破線ルートが続く。

それぞれのピークを繋いだカモシカ平・黒バラ平の笹原は、何れ劣らず素晴らしい風景だった。
しかし今回のコースで私が最も美しいと感じたのは、この「房子山」前後に広がる、緩やかな起伏のある笹原だった。



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縦横無尽に鹿道が走る、黄金色の笹原がどこまでも続く。
定められた登山道など一切無い明るい広尾根を、気の向くまま三人三様で房子山を目指す。

素晴らしい時間だった。



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駄文を重ねようかとも思ったが、正直言葉が見つからない。



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歩いたまま、見たままの画を貼ることにした。



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これまでに、深南部の著名な山々を数多く眺めることができた。

しかしそれらより強く惹かれたのは、深い谷を刻んだ尾根に乗る、名も知らぬ頂だった。
全く山座同定することのできない山々を見下ろしていると、幽玄の森に遊ぶ獣達の姿が脳裏に浮かんで来る。



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バラ谷ノ頭~房子山までは、およそ3kmの行程だ。
強い無数の鹿道が走る為、視界不良時には道迷いの危険を伴う、広尾根の通過点である。

走り去る鹿の群れを見た。



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半ば夢心地で笹原を歩く。
風は無く、聞こえて来るのはカサカサという笹の音だけだった。

疲れは全く感じなかった。



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古いブログを読み返すことがある。
そこに山行中の感情などが書かれていれば、その日を懐かしむ手助けになってくれる。
当時のタイムや登山道の状況、装備を確認するなど、次回の山行で役に立つこともある。

しかしこの区間はただただ全てが美しかった。
あまり写真を貼るだけのブログは好きでは無いが、私にとってはボツにしてしまうのは惜しい写真が多すぎる。
今回の山行で忘れずにいたいのは、この風景そのものなのである。



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恵那山の奥には薄っすら白山が見えていた。
素晴らしい快晴の日に、最も美しい行程を進むことができたようだ。



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そして、緩やかに登るとそれはあった。



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9:13、「房子山」(1868m)登頂。



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山頂では先程の若者が休憩をとっており、3人揃った貴重な記念写真を撮影して頂いた。
ここでしばらく休憩を取り、山座同定を楽しんだ。

これまで歩いてきた道、これから進む縦走路を見渡すことのできる深山の雰囲気に満ちた房子山は、私のお気に入りの一座となった。



第四部の記事へはこちらからどうぞ。

今回も最後までお読み頂きまして、大変ありがとうございました。

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by yama-nobori | 2017-05-17 22:28 | 登山 2017 | Comments(3)
Commented by ねも at 2017-05-18 19:19 x
まさに予想を裏切る展開、お天気も安定して最高だったようですね。興奮ぶりがよく伝わってきます。
私も荷物が重くならなければ歩いてみたいですが、虫が良すぎ!?
Commented by hs at 2017-05-19 08:14 x
 優さん おはようございます!
山行記録は鮮度が命です。ワクワク・ドキドキしながら読み通しています。南アルプス深南部の山は素晴らしいですね! 
私がこの山域を訪れたのは静岡百山を始めた2007年の秋でした。10年前の記憶が甦ってきました。
水窪から入山して等高尾根から黒法師をピストンして丸盆へ鎌崩を通って不動岳を目指したのですがガラガラの崩落に危険を感じ戻って林道を歩いて不動岳をピストンしました。
4月から母の介護の日々で暫く山は休止状態です。優さんの記事を今後も楽しみにしています。
Commented by yama-nobori at 2017-06-02 21:08
> hsさん

うひゃ~お久しぶりです!
ご苦労されているそうですね。
あれからすっかり普通のサラリーマンになってしまい土日しか動けなくなりましたが、またご一緒できたらと思っています。
今年はバリエーションだらけでもう予定がびっしり!
南アルプスから出ることは無いと思っていますw
また連絡してくださいませ(こちらからもメール入れます!)
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