藪山讃歌【丸盆岳東尾根~黒法師岳】②@南アルプス深南部 2017.04.30(日)~05.03(水)



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丸盆岳東尾根から稜線を目指す、第二部のスタートです。

第一部の記事へはこちらからどうぞ。




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起床予定は3:00だったが、2:30に目が覚めた。
まだ時間も早かったので、続きが気になり本を読む。
のんびりと朝食をとり、テント越しにHさん御夫婦へ挨拶を済ませて撤収を行った。



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鳥好きなH女房さんは小鳥の声を嬉しそうに聞いている。
昨日の疲れはかなり取れているように見えたが、睡眠に失敗したH旦那さんの体は重たそうだった。

5:00、幕営地(1277m)を後にする。



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本日の目標は、丸盆岳~黒法師岳を超えた先にある、水を採ることのできる「黒バラ平」である。

雑木林に美しい朝陽が降ってきた。
しかしこの日の予報は午後から雨。
雷の予報も出ているため、ビバークを視野に入れて行動する必要があった。
少なくとも稜線上での雷だけは避けねばならない。



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5:15、三等三角点のある「下西河内」(1447.8m)登頂。
今回の山行で、ようやく立つことのできた最初のピークは、樹林に囲まれた地味なものだった。

南アルプスらしくて、実に良いではないか。



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ひっそりと咲くバイカオウレンが可愛らしい。
今シーズン出逢うのは初めてだった。



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雑木林が天然林へと変わると、南アルプスの清々しさが五感に沁みてくるようになった。

数多くの鹿のヌタ場を見かけるようになる。
ここは彼らの領域、我々は鹿道を借りて頂を目指す。



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月日を重ねた倒木がいたるところにあった。

葉を茂らせ、どっしりと立っていた巨木の在りき日の姿を想う。
そして、土へと還って行くこれからの長い歲月を思い描く。



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すると、自分の存在の小ささに気付かされて肩の力が抜けるのだ。
ゴミ溜めのような場所で、日々眉間に皺を寄せ生活することのなんと不自然なことか。
私にとっての非日常は、むしろ日々の日常を指す。



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気持ちの良い場所を見つけ、倒木のベンチで休憩をとった。
馬酔木(アセビ)の巨木が見事だった。



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標高が1600mを過ぎると、足元に笹が混じるようになった。



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傾斜は徐々に強くなり、やがて深南部の洗礼が始まった。
足元を鳴らしていた笹は胸の高さとなり、やがて背丈を超えて視界を奪うようになる。



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途中、この日初めて雪が現れた。



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笹を両手で掴み、体を持ち上げ標高を稼ぐ。
なかなかに大変な通過点ではあったが、笹の藪漕ぎは聞き分けが良く、さほど苦にはならかなった。



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尾根を外さぬよう、注意しながら高みを目指す。
こんな時、頼りになるのが鹿道だ。
彼らの道は、最も効率の良いルートを教えてくれる。



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気付けば左手の前黒法師岳が大きくなり、逆側では鎌崩ノ頭の異様が圧巻だった。



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笹漕ぎの終了点近くで新しい焚き火跡と出会う。
人知れず歩いている登山者のいることに嬉しくなった。



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8:00、笹薮を突破した。
笹薮に恐怖を感じた山行もあったが、やはり藪漕ぎで一番手強いのはあいつらだ。

恐怖の笹薮の記事へはこちらからどうぞ。

激薮の記事へはこちらからどうぞ。



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笹薮を抜けると斜度が緩み尾根が広がった。
雪を残したシラビソの樹林帯がただただ美しい。



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さほど深くは無いだろうと雪に乗ると太ももまで落ちた。
引き抜こうにもザックが重く、身動きの取れない場面も多々あった。

歩きやすそうな場所を選びながら、二重山稜の高みを目指す。



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広かった尾根は収束し、やがて空が近づいた。
地形図を広げると、目指す頂が目の前にあることがわかった。



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息を切らせて足を出すと、それはあった。



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8:40、「丸盆岳」(2066m)登頂。

盆を伏せたような山容が山名の由来である。
初めて眺める角度からの峰々が、視界一杯に広がった。



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霞が残念ではあったが、深南部随一の展望を誇る丸盆岳からの眺望を確認する。

北側には、大きくガレた「鎌崩ノ頭」が、そこを征く登山者達を拒んでいる。
深南部展望の山「不動岳」が近い。
不動岳の左奥には双耳峰の池口岳、右肩に光岳とイザルガ岳、そして聖岳、上河内岳、笊ヶ岳がぼんやりと見えていた。



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累々と横たわる雄大な風景の中で一際目立つ存在が、不動岳手前にある天空の草原「鹿ノ平」である。
その桃源郷で幕営したいんだとH女房さんが話してくれた。
3人で幕営し、この丸盆岳を眺め直したならば、どんなに楽しいことだろう。

また一つ、深南部を訪れる理由が増えた。



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そして何と言っても南側への眺望だ。
右に「バラ谷山」を配した「黒法師岳」が、闊達な頂を空に向けている。
そこに続く笹原のなんと美しいことか。

私はとある本に出会ってから、この景色に強い憧れを抱いてきた。
枕元においてある書籍の世界が、今、目の前に広がっているのである。

いずれも標高2000m程度の峰々ではあるが、これらの頂に立つことができる登山者はさほど多くは無いのだろう。



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9:03、御夫婦も到着となる。
おつかれさま!


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「丸盆岳東尾根」は素晴らしいバリエーションだった。
お決まりのハイタッチの後に三角点をタッチ、3人での記念撮影を行った。

この頃から風がやや冷たく吹き始め、急激な寒気の流入を肌で感じ取ることができるようになっていた。
気圧計も大きく低下、残り時間が少ないことを教えてくれた。



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9:27、展望を楽しみ、ハイマツの南限である丸盆岳を後にする。



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笹の斜面を下る。
走り出したい気持ちだったが、笹原の中には倒木が隠れている。
注意を怠ると思わぬ怪我をするので注意が必要だ。




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丸盆岳へ向かう数パーティーと擦れ違う。
如何にも山が好きそうな、山慣れた登山者達だった。

丸盆岳から黒法師岳までは、地図に記載のある破線ルートとなる。



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やっと出会うことのできた景色の中、小さな撮影会を行った。
私達を南アルプスへと駆り立てて止まない、変態の教科書名著「南アルプス・深南部 藪山讃歌 知られざるルート94選」の表紙はこの場所で撮影されたのだ。




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同じアングルを狙い撮影を行ったが、あまり上手くは行かなかった。
H女房さんに至っては全開の笑顔でカメラ目線、何度か撮り直す



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しかし永野さんと同じ風景を見ることのできた我々は、ほくほく顔でその場を去った。



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意気揚々とカモシカ平の笹原を泳ぐ。
立ち枯れの木々と、交錯した鹿道が素晴らしいアクセントだ。



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明るい稜線歩きに心が弾む。
丸盆岳は離れるほどに、大きくなった。



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途中、丸盆岳山頂から戻ってきた軽荷の登山者が、追い抜きざまに私を呼び止めた。

んんっ?



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昨年、赤石岳避難小屋で一緒になった男性だった。
まさか深南部で知り合いに会うとは思わなかった。
全く以って山の世界は狭い。



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彼は前黒法師岳からのピストンとのことだった。
情報交換をしてお別れとなった。

また南アルプスでお会いいたしましょう!
気づいてくれてありがとう!

ちなみに後日、彼のYAMAPを発見し、愛読書を見て笑ってしまった。


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カモシカ平を抜ける頃、黒い雲が増えていることに気がついた。



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「等高尾根分岐」を通過。



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黒法師岳へはなかなかの急登だ。



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急登の切れ間から、この後向かう幕営予定地「黒バラ平」が見えていた。
あそこまで進めれば水場は近い。



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谷底まで切れ落ちたガレの縁を慎重に進む。
谷から吹き付けてくる強風に体を煽られ、Hさん御夫婦のペースが上がらなかった。
寝不足がたたっているようだ。



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しかし雨雲は足を早めてやってくる。
遠く雷の音も聞こえ始めた。



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振り返ると、池口岳の辺りには、既に雨が落ち始めていることがわかった。



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私はペースを上げ、バラ谷ノ頭分岐で荷物をデポ。
黒法師岳へと駆け上がる。



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11:14、「黒法師岳」(2068m)登頂。

果たしてそこには、風を避けることの出来る平坦地と樹林、そして僅かながらに残雪があった。
調理で使用する水はこの雪を利用すれば問題ない。

ビバーク地が見つかった。


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追いつたHさん御夫婦へビバークする旨を伝えた刹那、雨が落ちてきた。
間一髪、荷物を回収しテントを張り終えると、本降りの雨に閉じ込められ、雷鳴が近づいた。



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しばらく経つと雷は去り、雨脚も弱まり外に出られるようになった。
撮り損ねていた記念撮影を行い、残雪を掘って雪を確保した。



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黒法師岳の三角点は、変種一等三角点だ。
「×」印が大変珍しい。

撮影を終えると再び雨が降り始め、テントへと逃げた。



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程なくして御夫婦のテントは静かになり、そのまま翌朝まで顔を合わせることは無かった。
雨が止むと、黒法師岳の山頂はガスに包まれた。



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読書をしながら寝てしまっていたようだ。
うたた寝から目覚めると、周囲が明るくなっていて驚いた。



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慌てて山頂へ向かうと、光り輝く青空があった。
強風に運ばれたガスが物凄い勢いで流れ去って行く。
展望のある場所まで移動しようかとも思ったが、明日の楽しみにと思い留まった。



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明日は、今回の山行で最も楽しみにしている行程が待っている。
早い時間に夕食を食べ、夜を待たずにシュラフへ潜り込んだ。

深い山に抱かれて眠る。
目を覚ます度に、周囲には鹿の気配があった。
深山幽谷(しんざんゆうこく)、この言葉は深南部にこそ相応しい。



第三部の記事へはこちらからどうぞ。

今回も最後までお読み頂きまして、大変ありがとうございました。

↓励みになりますので、よろしかったら『ぽち』っとお願い致します(^^)/


....と、〆れば良いものを余計な事を書いておく。
山頂はなんとポケストップだった(しかも雪のアイコン)。
一体このストップは過去何回回されたことがあるのだろうか。
深山幽谷が聞いて呆れるw

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お陰様で充実のテン泊を楽しむことができました。
運営さんありがとうw


by yama-nobori | 2017-05-13 09:39 | 登山 2017 | Comments(2)
Commented by ねも at 2017-05-13 11:58 x
実に読み応えがあります。翌日からはやや濃いくらいの道程かと推測していますが、予想を裏切る展開もあります!?
この日は、静岡市街も晴と雷雨が交錯する変な天気でした。
ところで昨日、同僚教員の授業を聴いていたら「変態」は最高の誉め言葉だそうです。ゆたかさんも同じ語法ですね!
Commented by yama-nobori at 2017-05-13 13:16
> ねもさん

早速お読み頂きましてありがとうございます!
この日の雷雨については後日談がありますのでまた後々の記事で。

「変態」は...褒め言葉。
そんなの当たり前じゃぁないですかw
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