ここから先、良く踏まれている千枚小屋へのルートとは違い訪れる登山者は極端に少なくなる。 ナナカマドが秋色に燃えていた。 ここで登ってくる登山者と出会い、獣かと思い互いに腰が抜けるほど驚いた。 先はまだ長いが気持ちが逸る。 ガスが強く展望は得られなかった。 斜度は緩くルートは明瞭だ。 千枚小屋~椹島ルートを乗せたどっしりとした尾根を眺めることが出来た。 この小さなロッジの人気は驚くほどに高い。 特に紅葉シーズンの予約については、3月の予約受付開始と同時に満室となってしまう、収容人数30名(本館)+8名(新館)の完全予約制の山小屋だ。 椹島からの送迎バスに乗ることができるので、普段全く歩くことをしない観光客でも静かな美しい南アルプスに触れることができる。 ちなみに敷地内にテン場もあり、少し離れた場所には「二軒小屋ロッジ 登山小屋」もあるが、送迎バスや本館の施設は利用することはできない。 兎にも角にも、この二軒小屋ロッジは高嶺の花、別格の存在なのだ。 6人での相部屋が基本となるが、この日の宿泊者はなんと3名。 1部屋を貸し切りで利用させて頂くこととなった。 ちなみに新館はツインルームが4つ。 お値段+10000円である。 ウッディな館内はピカピカに磨き上げられており、下界のホテルと何一つ変わらない。 つい先程まで、足を滑らせたら確実に死ぬ場所にいた人間の宿泊地だとは到底思えない。 ここは天国だ。 用もないのに無駄に便座に座りこみ、その暖かさに感動する。 しかし感動の涙を流すべき場所はトイレではない。 ようやく歌詞の意味を正しく理解することができて感無量であった。 散策しようかとも思ったが、すっかり腑抜けとなった。 テラスの長椅子に体を横たえ、一服しながら読書を楽しみ至福の時を満喫。 涼しい風を感じていると、準備が整いましたと声がかかった。 二軒小屋ロッジには、お風呂がある(16:00~20:00)。 最高のお湯だった。 翌朝二軒小屋の周囲を散策した。 朝の空気がとにかく美味い。 送迎バスまでまだ時間があったので、腹ごなしの為に再び散策を楽しんだ。二軒小屋の皆さんに見送られ、大井川に沿って椹島へと向かう。 二軒小屋から木賊堤防間の大井川は、管理釣り場となっている。 管理釣り場と言っても、良く見かけるような釣り堀とはわけが違う。 7.5kmの川を17区間に分け、1つの区間に1グループしか入渓させない完全予約制であり、私の知る限り国内最大の規模である。 大井川の源流域であり、天然モノのアマゴ・イワナはもちろん固有種などの貴重な魚も釣ることができるのだそうだ。 値段は一般的な遊漁券と同じである。 二軒小屋のすぐ北をリニア南アルプストンネルが通る。 そのメイントンネルからの非常口が、二軒小屋のやや南に建設されることが決まっており、既に早川町側での掘削が始まっている。 残土置き場の予定地もこのすぐ近くだ。 トンネルを掘れば多くの場合水位が下がり水質が変化する。 環境に敏感な生き物達はすぐに反応を示すだろう。 この管理釣り場が強い意思をもって運営を始めたのは2014年4月26日。 金銭目的で無いことは誰にでもすぐにわかるはずだ。 変化をいち早くキャッチし、行動を起こすためにこの管理釣り場は作られた。 途中、滝見橋から千枚小屋への登山口を通過した。 過去何度も気持ちを奮い立たせ入山してきたこの思い出深い登山口も、老朽化が進み付け替えを予定しているそうである。 変わるべきもの、変わってはいけないものが数多くある。 9:35、椹島に戻ってくるとサンダル君と再会した。 ご来光の成果を訊ねると、昨日より雲が厚く何一つ見ることはできなかったのだそうだ。 また来年、登りに来ればいい。 最高のご来光に出会えることを願う。 バス到着までの時間、芝生に寝転んでのんびりと過ごした。 今年も無事に帰省を終えた。 二日前、確かに積もっていた富士の雪は消えていた。 アクセスが悪く、何をするにでも少し不便な南アルプスが私は大好きだ。 昨今南アルプスの山小屋では名物主人達の世代交代が行われ、その準備を進める声もあちらこちらから聞こえてくるようになった。 この山域の魅力は、もちろん山そのものによるところが大きいが、山小屋の存在を欠かすことは出来ない。 一座一座が大きい為、山小屋が無ければ実際縦走することが困難となる縦走路も多いのである。 そして愛して止まない山小屋の主人がそこに居る。 私のように山小屋のご主人に会いに行くことが目的の登山者も多く、ハイシーズンを外した時期に小屋で出会う登山者との語らいも楽しくて仕方がない。 このまま変わらずに在り続けて欲しいと願わずにはいられない心の故郷がこの山域だ。 次はどのタイミングで登ろうか。 その時ももちろん、赤石岳避難小屋のTシャツを着て行くつもりである。 おしまい。
by yama-nobori
| 2017-04-22 20:40
| 登山 2016
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Comments(2)
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sen230727
at 2017-04-24 20:34
息子さんへのお土産、無事渡せて良かったです。以前聞いていた今回の登山コースの山小屋の素晴らしさが解って
来たような気がします。苦労して担ぎ上げた土産の酒、どのような顛末となったのでしょうか?おおよその、推測 は出来るのですが!また下山時の登山者の少ない山で予想外の登山者との遭遇、私も経験が有ります。熊除け鈴が 有効でないでしょうか?徐々に鈴の音が近づいて来る。これであれば、驚愕で無く安心感でホッとするのではないかと思います。赤石避難小屋は必ず泊まる行程にします!
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yama-nobori at 2017-04-25 21:08
> sen230727さん
こんばんは! 一升瓶はその日の内にある程度まで処理して、その後は氏の五臓六腑へ染み込んだことと思いますw 熊よけ鈴はどうも好きになれず滅多に使いません。 そう言えばあの五竜の後、遠見尾根で目の前に現れたんですよ! 無視してやりましたけどねw 赤石岳避難小屋で合流できたら素敵ですね! 前もってわかっていれば比較的休みの取りやすい仕事です。 近くなりましたら連絡取り合いましょう!
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