癒やしを求めて@しらびそ小屋 2016.08.06(土)~07(日)


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しらびそ小屋は北八ヶ岳のみどり池の畔、標高2097mに建てられた小さな山小屋である。
日本の山岳文学の傑作と称される「北八ツ彷徨」の著者、山口耀久(あきひさ)氏が小屋の名付け親であり、50年以上の歴史をもつ。
リスや小鳥たちが集い、夏でも煙突から薪ストーブの煙が立ち昇るひっそりとした佇まいは、まるで絵本の中の風景だ。

余談ではあるが、耀久の「八ヶ岳挽歌」に「しらびそ小屋」と言う随想録がある。
実に人間臭い話が書かれているので、興味のある方は読んでみると良い。
但し、絵本の中に描かれたようなこの小屋のイメージを覆すことになっても、責任は取らない。




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慣れないゴミ溜めでの毎日で、心底疲れ果てていた。
ようやく訪れた念願の週末ではあったが、山に登ろうにも準備をする気力すら湧いてこない。
かといって、家で寝転がっているだけでは、体を休ませることはできても心が癒やされない。

...そうだ。
北八ツ彷徨の静かな山小屋に行ってみようか。



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稲子湯の先にある駐車場へ車を停めた。
「にゅう」へと向かうシャクナゲ尾根が気にはなったが、今日はピークを目指さない。
手ぶらのままで歩き始めた。



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キラキラ輝く初夏の木漏れ日に目を細め、新鮮な山の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

なんて清々しいんだろうか。
やっぱり山はいいなと心から思う。


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この登山道を無積雪期に歩くのは今回が初めてだった。
意外にも凹凸のある夏道が新鮮だった。



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しらびそ小屋にはたくさんの思い出が詰まっている。
中でも一番の思い出は、まだ幼かった息子くんとの山行だ。



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2012年の厳冬期、スキー場などではなく、ふかふかした本物の雪で遊ばせてあげたくなり、ママの反対を押し切り連れ出した。

目的地は今日と同じ、しらびそ小屋だった。



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稲子湯からはCT2.0h程の短い行程ではあったが、切り株を見つけるたびに座り込んで休憩をとった。
一生懸命に歩く小さな後ろ姿がとても可愛く、その記憶は今でも鮮明である。



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切り株を見かけるたびに、アンパンを食べていたあの姿が瞼に浮かぶ。
この切り株にも腰掛けたんだろうか...。
そう思うと、全ての切り株が特別なものに思えた。



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あの日、快晴予想は見事に外れ、少し吹雪かれた。
青空と白の「おとぎの国」に行こうと話をしていたのに、舞台はすっかり雪女の日本昔話になった。

でも、息子くんも楽しかった...はずである。



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この行程唯一となるやや強い斜度を登れば、あとひと踏ん張りだ。



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木々の間からは「にゅう」が見えていた。
ここにも彼と一緒に登ったが、あまりに幼かったので記憶が薄いのだそうだ。
いずれそんな昔の思い出も記事にしてみたい。



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やや遅い時間に歩き始めた為か、他の登山者に出会うことの無い静かな行程だった。



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薪の香りが徐々に濃くなると、みどり池の畔にひっそりと佇む「しらびそ小屋」に到着となった。



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初めて見る、凍結していない「みどり池」が新鮮だった。
なるほど、名前の通り緑色なんだね。



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みどり池にも思い出がある。
凍結した池の上では相撲をとったり、雪合戦を楽しんだ。



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雪に練乳と黄身とバニラエッセンスを混ぜて即席のアイスクリームを作ってあげたら、食べすぎてストーブの前で震えてたっけ。
懐かしいな。



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夏の方が画になると思う。
やはり絵本の中の風景のようだ。
随想録は読まないほうが良いだろう


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天狗岳が良く見えていたので登りに行くか迷ったが、思い留まり小屋のドアを開けた。



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オーナー夫妻に挨拶を済ませ、いつものメニューを注文して席につく。
息子くんはあの時のラーメンの美味しさを良く覚えていて、その後二回も食べに来ている。



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かりんとう、コーヒー、チーズケーキがとても美味しい。



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しかしこの小屋の名物は、薪ストーブでカリカリに焼いた厚切りトーストだ。
以前は立ち寄りの登山者も食べることができたが、現在では宿泊者だけの特権となっている。
未食の方は是非泊まってみることをおすすめしておく。



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窓の外を眺めていると、いつもの様にリスや小鳥達が遊びにやってきた。
イメージ通りの癒やしの時間が、静かに、そしてゆっくりと流れる。



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かつて小屋には、二頭の犬がいた。
しらびそ小屋の看板犬であった「ラッキー」と「吉」は晩年盲目となり、いつもストーブの近くで丸くなっていた。
驚かせないよう、下からそっと手を伸ばすことが、彼らを撫ぜる時のルールであった。



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2012年の2月、息子くんが頭を撫ぜると嬉しそうに尻尾を振っていた二頭はもういない。
我々が訪れたこの年の8月、吉が先に亡くなり(16歳)、同月、後を追うようにラッキー(21歳)が旅立った。

お墓は小屋に寄り添って建てられている。
薪ストーブの周りがやけに広くなってしまった。



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そんな昔話をオーナーと楽しんでいると、息子くんの書いた雑記帳の存在を思い出した。
小屋番さん達がノートを探してくれることになり、部屋の奥へと消えて行った。
やがて同年代のノートを沢山運んできてくれたが、残念ながら息子くんの文字を見つけることは出来なかった。

でも、探すなら二人のほうがきっと楽しく、見つけ出した時の喜びはより大きいものになるだろう。
息子くんと再び宿泊する時の楽しみにとっておくよと伝え、お礼を言った。



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三時間近くも過ごしただろうか、ずいぶんと長居をした。
ご無沙汰している本沢温泉にも挨拶して行こうかと思ったが、下山することにした

また遊びにきますね。


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まだ時間も早かったので「八岳の滝」(やたけのたき)へと立ち寄った。
この場所は知る人ぞ知る「コマドリ」の生息地であり、いつも望遠レンズを構えたカメラマン達が息を潜めている静かな名瀑だ。



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落差約10m程の小さな滝ではあるが、私はこの静かな流れがとても好きで、幾度となく訪れている。
見事な氷瀑となるので、冬期もおすすめである。



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若いカモシカが、近くに遊びに来ていた。



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大好きな定宿である「稲子湯」でお湯を楽しみ帰宅した。



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ピークを目指さない静かな山行もたまには良い。
動的な南八ヶ岳に対し、北八ヶ岳の小屋を巡るハイキングは静的で私のお気に入りだ。
疲れているからだろうか、この記事を書いていると無性に遊びに行きたくなってしまった。



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季節を変えて訪れたい、北八ツ彷徨・しらびそ小屋である。



おしまい。


今回も最後までお読み頂きまして、大変ありがとうございました。


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by yama-nobori | 2017-02-23 19:55 | 登山 2016 | Comments(0)
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