身延山(みのぶさん)は山梨県南巨摩郡身延町と早川町の境にある標高1,153mの山である。 同地にある日蓮宗総本山久遠寺の山号でもあり、その別名としてもよく用いられる。 3月中旬および10月上旬に見ることのできるダイヤモンド富士や、樹齢400年超の「しだれ桜」で有名な山でもある。 しかしこの山の最も大切な日は別にある。 身延山を「登山対象」と見た場合、往復4時間程度のコースタイムが付けられた立派なハイクコースがある。 普段歩き慣れていない、白装束の信者や溝中の方々にとっては、まさしく修行になるのであろう。 しかしここにはロープウェイという文明の利器がある。 この営業時間に間に合わせるため、三石山登山口から9kmの道程を約30分かけて移動してきた。 標高を金で買う、 しかしそれではあんまりだ。 身延山を登山目的で訪れたならば、せめてこの久遠寺山門からスタートしたいところである。 14:40、山門をくぐった。 時間が遅かったためなのか、人の姿はまばらであった。 さあ、あと少し。 身延山は観光以外で訪れたことは無かったので、季節を外した人の少ない光景に驚いた。 正直「山」という認識を持っていなかったので、この本堂から先、つまり山頂に行くのは今回が初めてだった。 下の方は人だらけだったのでフレームアウト.... このロープウェイは関東一の高低差であるらしい。 薄っすらとではあったが、天子山地の上に富士山が見えていた。 というか、そもそもあるのだろうか... 取り敢えずいくつかある展望台へと移動してみる。 何か見えるといいなぁ。 この時はまだ、身延山との関係性もろくに知らず、「近い内にさくっと登って下りてくるだけの山梨百名山の一座」との認識しかもっていなかった七面山。 まさか生涯忘れられないような山行になろうとは、、、。 そのお話しはまた後日。 南アルプスの秀峰たちはガスの中。 確かにいつも南アルプスからは身延山が良く見えていたことを思い出した。 その右肩の小さな凸部が上河内岳だと同定できる人はかなりのマニアだと呼ぶことが出来るであろう。 笊ヶ岳を見ることができなかったのは残念だった。 この場所は、晴れていれば南アルプス南部から奥秩父山塊までを見渡すことのできる大展望台であるようだ。 さて、まだ下りのロープウェイまでかなりの時間があった。 近くにあったベンチに腰を下ろすと、早川渓谷についての説明板がある。 奈良田までの道を思い浮かべながらふむふむと読んでいると、スッカリと存在を忘れていたとあるものの存在に気がついた。 既に自立できなくなっており、後ろのトラロープに寄りかかってかろうじて立っている姿がとても痛々しい。 これは私の見た中では「王岳」の次にひどい状態だ。 山梨百名山の山頂標設置はボランティアによって行われており、このように老朽化の進んだものは交換の対象となっている。 興味のある方は募集要項があるので読んでみてはいかがだろうか。 私もこれだけ楽しませてもらっているのだから何か恩返しをしたいと思ってはいるのであるが....。 ロープウェイを降りてすぐのところにある立派な山頂標は、富士山と共に、大勢の方の写真に収められてきたことだろう。 しかしこちら側の目立たない山頂標は、あまりにも存在感が薄かった。 ただ、南アルプスの見える展望台の片隅にひっそりと立てられているあたりが、なんだか「らしく」て良いと思えた。 思親閣は、日蓮聖人が故郷房州小湊の方を拝んで両親を慕い思いをはせた霊地であり、名の由来は「思親山」の記事で書いたものと同様だ。 日蓮宗の開祖・日蓮がこの山に入ったのは1274年5月17日のことだった。 日蓮53歳、佐渡流罪が許され島を出たのが二ヶ月前、鎌倉を経ての入山であった。 甲信地方を回り一ヶ月後の6月17日、西谷に草履を結んだ。 久遠寺はこの日を入山記念の日とし、毎年15日からの3日間「開闢会」(かいびゃくえ)を行っている。 実はこの日、山門ではなにやらイベントの準備が行われていた上に、参道では数多くの垂れ幕が下げられていた。 思親閣までやってくると、大勢の白装束の方々が参拝をされている。 これを日常的な光景であるのだろうと思っていたがどうやら違ったようだ。 後日登った「七面山」で知ることになるのであるが、2016年度の開闢会は6月12日・15日~17日に行われたのである。 この日は11日、つまり前夜祭が行われる直前(18:00~)であったのだ。 光が沈み、先程より山々の輪郭が良く見えるようになっていた。 富士の手前に連なっているのが天子山地である。 左から、毛無山・金山・雪見岳・御堂平・長者ヶ岳・三石山・思親山と続く。 旅の終わりに身延山を選んで本当に良かった。 「白鳥山」以外、今回の山行で登った山が全て見えている。 16:15、ロープウェイ乗車。 私は仏閣などを見ることは好きではあったが、宗教的な考え方などにはあまり興味がなかった。 しかも「南無妙法蓮華経」とお題目を唱えることで全てを解決してくれるなど、なんて虫の良い話であろうとさえ考えていた。 しかしお題目とは、そもそもそのような他力本願な魔法の呪文では無く、自分の「心」に向けられるものであることを後日知ることになった。 この階段は再び上がる日が来るだろう。 その時は、綺麗になった山頂標に出会うことになるのであろうか。 登山ではなく、参拝として再び訪れたい、身延山・久遠寺であった。 さて、これでようやく南部の難関、高ドッキョウ・貫ヶ岳・白鳥山・篠井山・思親山・十枚山・三石山・身延山を登ることができた。 いろいろな事が絡み合い、残された時間はあと僅か。 さあ、「いんちき田中陽希」スタイルでラストスパートだ!
by yama-nobori
| 2016-09-19 23:32
| 登山 2016
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Comments(4)
いつも楽しみに拝見させていただいています。
ゆっくりとしたペースですが私も山梨に通ってるので参考にさせていただいております。 「金で買う標高」とは面白い表現ですね。納得の一言に思わず笑ってしまいました。 南部方面は私はこれからなのですが、巧みな表現に感心しながらも、 故にヒルには完全に戦意喪失です。(笑)
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sen230727
at 2016-09-20 22:21
優さんの登頂記を読んで、北側展望台に頂上標識が有るのを知り残念。歴史の山百選の
身延山、私は平成26年7月25日に登りました。その時の登頂記では、前日富士山から下山 し、ロープウェイ有料駐車場に到着。久遠寺を参拝後、駐車場で入手したパンフで東コース5キロ往復4時間半を選択12時にスタート。この年、最初の山が富士山でその疲労で喘ぎ ながらやっと奥の院思親閣に到着。ここが頂上と標識を探しましたが見当たらず、諦めて一番高いと思われるポイントで写真を撮り下山。途中で行き会った若い僧侶から【七面山に是非登ってください】と言われた。やっとの思いで16時40分駐車場へ。予想以上の駐車料金に疲労が倍加した。と書かれているが、【標識がどこかに有る筈】執念が欠除していたと反省。ま、奥の院も参拝したし良しとすると、カテゴリを緩める私です。
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yama-nobori at 2016-09-22 10:46
whitetipさん、はじめまして!
こんな辺境の偏ったブログを読んで下さいましてありがとうございます(^^; 田舎者なのでアンチ北!なのであります。 けっこう行ってるのは内緒ですが....w 何かのお役に立てるようであれば幸いです。 ぜひ6月の雨上がりの南部を体験してください!! コメントありがとうございました!!
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yama-nobori at 2016-09-22 10:52
sen230727さん、その後お元気ですか?
富士山後にいんちき無しで登られたんですね~。 流石ですね!晴天狙いの貴殿ですからきっと素晴らしい富士山を眺めることができたのではないでしょうか。いつか旅のブログなどをまとめられればよろしいのに。 なるほどあの山頂標の位置関係は、完全に観光客向けなんですね。 参拝ルートだと通りませんからね~。 貴殿との記事はあと10座くらい先になりますw まだまだ先は長い!
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