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思いが育てた登山道@篠井山 2016.06.10(金)



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篠井山(しのいさん)は、山梨県南巨摩郡南部町にある標高1394.4mの山である。
富士川の西岸に、どっしりとした山体を横たえたこの山は、南峰と北峰の二つ頂をもっている。
北峰にはお堂と小さな祠が建ち、篠井(四ノ位)大明神が祀られているが、展望は無い。
三角点のある南峰は、富士山はもちろん駿河湾から伊豆半島までを見渡すことができる。
篠井大明神のご神体は諸説ある。
ある天皇の第四子(四之宮)説、歌人で従四位の凡河内躬恒説など。
「しのい」の名はこれらに由来があるという。





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利用したルートは、最も登られている「大洞橋登山口」(奥山登山口)からのピストンである。
カーナビを使用するなら「奥山温泉」をセットすると良い。
南部町徳間から福士川渓谷沿いの林道を奥山温泉目指して進み、左手に見送った更に奥の林道終点に登山口がある。

福士川も以前はよく鮎釣りに訪れていた懐かしい土地だ。
解禁間もない清流沿いにはたくさんの「とも鮎 おとり」の旗がひらめいていて、久しぶりに竿を出したくなった。
先に登った白鳥山からはおよそ15kmの移動である。
(白鳥山の記事へはこちらをクリック)


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天気は悪く無かったが、スタート時間が遅かった。
気温の高い日でもあったので、山頂は既にガスに包まれしまっているようだ。

13:20、標高700mの登山口を出発。


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登山口には可愛らしい木彫りの熊が道案内をしてくれていた。
この篠井山には「熊」が多く出没するらしいので注意が必要だ。



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それに加えマムシにも注意が必要らしい。


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しかし本当に注意すべきは『あれ』の存在だ。
数ある南部のヒル山の中でも、古くから王者に君臨し続けているのがこの山なのである。
その証拠に、5~10月までのヤマレコにはほとんど記録がない。
雨上がりの6月なんてキチガ....

さあ、ヒルを避けるために傘をさしながら歩く登山者も居るという篠井山の実力や如何に。



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10分程舗装路を歩き沢を渡ると、美しい登山道となる。
清流が流れ、数々の滝が涼を運んでくれる。


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やがて登山道はつづら折りとなる。


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登山道にはいくつかの「熊よけの鐘」がある。
パイプをぶら下げたシンプルなものだ。

力いっぱい叩くと「キ~ン」という金属音が山に染みこんでいく。


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3.0km地点からは、山頂までの距離を100m刻みに教えてくれる標識が現れる。
道端にそっと立てられており、自己主張がなくて良い。

以後、数値の減って行くことが楽しみになった。


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苔むした沢沿いの道を進むと、二段に落ちる見事な「明源の滝」が現れる。
水の音が心地良かった。

錦の秋には素晴らしい景色になるのではなかろうか。


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登山道は実に歩きやすく疲れにくい。
この歩きやすさには、篠井山への強い思い入れをもつ、「とある会」の存在に理由がある。



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篠井山が山梨百名山に選ばれて間もなく発足したのが、登山愛好者でつくる「ふるさとの百名山に親しみ守り育てる会」である。

この会がまず行ったのが登山道整備であり、それに先立てて「登山道整備マニュアル」という冊子を整備した。
ここには誰が作業に参加しても統一した企画で整備が行えるよう、細かな決め事が書かれている。

「道幅は平坦地で1.2m、斜面は0.6-0.7m、急斜面は鉄杭とマルタで支えを造る。指導標は①正確なkmの算出②正確な標高測量③主要道から登山口までの指示標識の設置」等々が図解入りで指示された。

会員たちは、週末出勤で重い資材を背負い、ヤマビルに食いつかれながら作業を進めたのだそうだ。



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この日最後の一座となる篠井山は、登山道からの標高差が700mあり少々気が重かった。
しかしこの登山道のおかげて全く疲れること無く歩くことが出来た。

「ふるさとの百名山に親しみ守り育てる会」に感謝である。



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しかし、そうは言っても奴らはいる。
しかも高ドッキョウなどで見かけた個体よりも遥かにでかい。
尺取り虫のように移動するため、大きい分這い上がってくるスピードが恐ろしく早い。

ただ、高ドッキョウの「活きた絨毯」を経験したばかりの私にとっては、雨上がりから数時間が経ち、湿度の下がった場所にいるヒルなど敵ではなかった。
ひと桁台のヒルなど、もはやいないも同然なのだ。
そんな免疫力に守られ、冷静に指で弾き飛ばしながら標高を上げていった。



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以前からどっしりとした山体の篠井山に興味があった。

実際に歩いてみると、美しい滝の数々に苔むした雰囲気が実に良い山だ。
「会」が発足するほどこの山が愛されていることが良くわかる。

私もすっかりこの山が好きになった。


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登頂前からその山を好きになることが時々ある。
そんな久しぶりの感覚に、宝物を拾ったような気持ちになった。

少々荷が重いかとも思っていたが、一日の最後を篠井山にして本当に良かった。



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残り1kmを切ると木漏れ日が落ちてくるようになった。
光が差し込むと、心が更に軽くなる。


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「0.5km」を見送ると、「山頂ルート15分」の指導標が現れた。



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ヒノキ林のつづら折りからやや左手に回りこみ、ブナの多い尾根に乗る。



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うわぁ~、あと少しだ。


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14:40、「篠井山」(1394.4m)登頂。
所要時間1時間20分での登頂となった。


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生憎ガスが強い日ではあったが僅かながらの展望があった。
確認してみよう。



とうとうと眼下に流れているのは富士川だ。
つい先程登頂を済ませた「白鳥山」が良く見えていた。

本来ならば、天子山地の上に大きく裾野を広げた富士山が見えるはずである。



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右手方向に視線を移動させると、早朝から苦しんだ、高ドッキョウ~貫ヶ岳が見えていた。
北岳や間ノ岳などを眺めることもできるそうなので、空気の澄んだ季節に再び訪れてみたいと考えている。



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ポストのようなものの中には「登頂者名簿」があったので記入した。
再開の時が楽しみだ。
でも夏場は二度と来ない


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30分程ガス抜けに期待しながら休憩をとったが、奇跡は起こらなかった。
15:07、下山を開始する。


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下山時は「温泉」に飛び込むことで頭がいっぱいだった。
もちろんビールも飲みたかったが、全てはさっぱりと汗を流したその後の楽しみだ。



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下山後は再び車中泊を行い、翌日も四座の登頂を目指している。
明日からの山行も、せめて「ひと桁台」で済む、快適な山行となりますように.....



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16:00、下山完了。

スパッツの中にいたのは5匹程度。
木の上からの襲来も無く、無事にこの日の全行程を終えることができた。



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そして念願の温泉にやってきた。

訪れたのは「なんぶの湯」。
やや塩素臭の強いお湯ではあったが、浴槽は広く人が少なくて快適だった。

温泉をこれほどまでに有り難く感じたのは久しぶりだ。
一週間程度の縦走後と同じ感覚であった。


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温泉後は、次の登山口へ移動を済ませ自炊するつもりであった。
しかし温泉の近くに定食屋を見つけてしまい、あっさりと誘惑に負けた。
地元の方なのであろう、酔っぱらいが大声で話していてうるさかったが、久しぶりに人間の住む場所に戻ってきたような気がして心地良かった。

店を出たのは19:30。
少しゆっくりしすぎてしまった。

明日の朝も早い。
一刻も早く登山口まで移動してビールを飲まなくては眠らなくてはならない。
地図を確認し走り始めた。

しかしこのあと、実に南部らしい大変な移動となるのであった....。



おしまい。

今回も最後までお読みいただきまして大変ありがとうございました。


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by yama-nobori | 2016-09-06 22:26 | 登山 2016 | Comments(2)
Commented by ねも at 2017-03-16 10:20 x
あちこち失礼します。2日で8山とは驚きの3乗です。体力と気力に感服します。どこに書き込もうか迷いましたが、篠井山にします。
篠井山は地味めの山ですが、登ってよし眺めてよしの好きな山です。安倍奥や身延沿線の山に登るとたいてい存在感ある篠井山が印象的!
三石山は同じような感想を持ちました。唯一違うのが、下山して長い車道をとぼとぼ歩いていたら、地元の方が車に乗せてくれて身延駅まで送ってくれました。
山梨側からの十枚山は大変だったのでは? 安倍川東山稜の山々は東から登ると大変(静岡側からのほうが易しい)が定説です。
さてニアミスとは身延山です。私は前日10日に身延山を歩いていました。ゆたかさんと似た感想ですが、この付近の山は6月に登るものではないと思いました。
それなのになぜ身延山?ですが、翌11日に久しぶりに小楢山に登ってみようと思い立ち、塩山まで行くなら、途中もう一山と考えた次第。それならもっと楽しそうな山はあるでしょと言われそうですが、私は今どき絶滅危惧種の非マイカー族で…… また表参道は何回か登ったのですが、裏参道が未踏だったこともあって。
小楢山はレンゲツツジが満開でお互い良かったです(5日も離れていてはニアミスと言わない?)。私も焼山峠からズルしちゃいました。時間が余ったので乙女高原にも(思わずドン引きの名称ですね)。こちらもツツジに加えてアヤメやクリンソウが咲いていました。

お次は七面山敬慎院にコメントする予定です。
Commented by yama-nobori at 2017-03-22 20:35
> ねもさん

わはは。
あの頃は追い込みに必死でしたからねw

おっしゃる通り、篠井山は再び訪れたいと思う素晴らしい一座でした。
十枚山はどちらから登ろうかかなり悩みました。
南部は山そのものよりアクセスがとにかく大変で...。

なんとニアミス!
身延山の裏参道を歩かれましたか!
実は今年のつい数週間前、登山口まで行ったのですがわけあって再び表から登りました。
そんな記事もまた追々。

小楢山は山頂テン泊を狙っていて近い内に登るかもしれませんw
なんせあの日はガスガスでしたから...。

いや~隅々まで読んで頂いてなんだか恐縮です。
どこかでお会いしたいものですね(^^)/
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