笠ヶ岳は岐阜県高山市にある飛騨山脈の標高2898mの山であり、北アルプスのほとんどが県境の山であるのに対し、この笠ヶ岳に於いてはその全てが飛騨の山である。 山名はなだらかな稜線の上にポッカリと突き出た笠を伏せたような特徴的な姿に由来しており、名実ともに岐阜県内の最高峰となっている。 深田久弥はその著書「日本百名山」の中で、『笠ヶ岳という名前の山は全国に沢山あるが、どこから望んでも笠の形を崩さないのは北アルプスの笠ヶ岳だけであり文字通りの名峰「笠ヶ岳」である。』と評し、『北アルプスを登って笠ヶ岳を見落とした人はあるまいがその頂上に立った人は案外少ないようである、それは通常の縦走路から大きく外れているからである。』と述べています。 私も以前から北アルプスに入山する度にその均衡のとれた山容の美しさに惹かれておりましたが、なかなかその一座のためだけに飛騨まで遠征する気にならず、この日まで未踏のままとなっておりました。 本来なら数日日程を増やした中規模の縦走を予定しておりましたが、秋雨前線停滞により予定変更。 週末のみ天候がもちそうであったため、行程の短いサブプラン、笠ヶ岳へと登って参りました。 ずっと登りたいと考えていた一座であったので、今回の不順な天候にはある意味感謝です。 今回利用したのは笠新道と呼ばれる新穂高温泉を起点としたルートで、かなりキツイ登山道であると聞かされておりました。 ただ、等高線を見る限りさほど混み合ってはいませんし、ジグが多く切られており登り一辺倒であるようには見えません。 ちなみに北アルプス三大急登の一つだと紹介される事もあるようですが、「剱岳の早月尾根」「烏帽子岳へのブナ立尾根」「燕岳の合戦尾根」がそれであったように記憶しています。 笠新道に関しては、昭文社『山と高原地図』にその記載もありません。 さてさて、笠新道の現実は如何に。 ※ピストンのため、片道のみを示しています。 私は例によって車中泊で前入りです。 30分程遅れて到着した二人と合流し、6:00、快晴の新穂高温泉駐車場(1105m)をスタートします。 新穂高温泉バスターミナルから蒲田川を渡り、左俣林道に入ります。 10分程歩くとこのゲートが有り、笠新道登山口まで3.5kmを約1時間程歩きます。 と、ここで、昔付き合いのあった仲間から登山中に事故を起こしたと連絡が・・・・。 しばらくの間、携帯片手に某山岳会とやりとりを行いながら林道を歩きました。 よって途中の写真がありません(^^; ※要救者は無事に下山させることが出来ました。 「わさび平」から引き水された水場があるので2L給水。 その後、杓子平(標高2,400m)を目指し標高を上げていきます。 さあ頑張ろう! 浮き石もほとんど無く、実に良く整備された歩きやすい、北アらしい登山道が続きます。 私は燕岳の合戦尾根を単純に長くしたようなイメージを持ちました。 途中、標高標識が5箇所ありました。 穂高連峰・焼岳・乗鞍岳が、透明度の高い秋空にクッキリと映えていました。 この日の天気予報は晴れ後曇り。 翌日は朝の内は雨、その後一旦あがって昼ごろには再び雨の予報。 よって景色を楽しむのはこの日だけとなりそうです。 久しぶりに16mmの広角レンズで景色を切り取りながら登ります。 実に清々しい秋晴れの登山日和です。 この日は笠ヶ岳山頂直下にある「笠ヶ岳山荘」泊です。 私は土日の、しかも北アの小屋に泊まるのは嫌で嫌で仕方がないので急ぐ気はさらさらありません。 景色を楽しみながら写真を撮り、ゆっくりと標高を上げていきました。 そろそろ笠新道も終わるようです。 やはりここまで、難しいところも特別急登と呼べるような場所もありませんでした。 ここまでCT通り4時間少々かかりましたが、真面目に歩けば2時間程度の行程だと思われます。 とうとう水を飲むことすらありませんでした。 杓子平広場には大勢の人がいたのでスルー。 杓子平は実に美しいカール地形で、左に目指す笠ヶ岳、そして、そこから右に連なる抜戸岳までの雄大な風景を楽しむことが出来る場所です。 この辺りで雪上テン泊するのも楽しいだろうなぁ(^^) あれほど暑かった夏はあっと言う間に過ぎちゃいましたね。 もう少し、夏山を楽しんでおきたかったなぁ。 ナナカマドの実が赤く色付いていました。 さて、杓子平からはガレ場の急登になります。 笠新道は実に楽な登山道でしたが、ここからは実際キツイ登りとなりました。 稜線が見えてるからなのかなぁ。 特にメンタル面で堪えました。 白馬大雪渓後の頂上山荘までの登りと似たような印象です。 ゆっくり歩いて、景色を楽しんで。 さあ、あと少し。 多少ガスが上がり始めてしまいましたが、展望はどうかなぁ? ここ笠新道分岐までもほぼCT通りのタイムで到着。 右手の抜戸岳方面には黒部五郎岳・薬師岳が良く見えており、左手には、これから向かう笠ヶ岳への美しい稜線が伸びています。 しかしこういった展望の良い狭い場所はよろしくありません。 土日の北ア百名山ともなると、そこは完全なる観光地です。 まともなリーダー不在のツアーやパーティー、道を譲ろうとしない(そもそも気づいていない)パーティー、登山道の真ん中で写真を撮っている 大声ではしゃぎまくっている この程度のハイキングコースでへたり込んでいる遭難予備群・・・。 ある程度は覚悟していましたが、アルペンムードは台無し。 過去歩いた北アの中でも最悪の状態。 あまりの酷さにすっかり興ざめです。 本気で帰ろうと思いました。 山そのものは素晴らしいのに、とっても残念。 13:00、この最後の渋滞元凶を追い抜かした後は、自分だけのペースで先に向かわせてもらいます。 ここから笠ヶ岳山荘まではCT1時間10分。 許せK嬢&T嬢。 先に行って飲んでる。 こんな連中と同じ尾根に立っていたくないわ。 左から黒部五郎岳・薬師岳・奥大日岳・剱岳・立山・雲ノ平・水晶岳・鷲羽岳などが見えているようです。 しかし一度下がったテンションは戻ってきません。 これを戻すことが出来るのは気持ちの良くなる麦茶だけです。 先を急ぎます。 笠ヶ岳山荘はテン場と10分程度離れています。 このため、小屋泊を決めていた女性チームと動きを合わせられるよう、私も小屋泊にしたのです。 こちらのテン場にトイレが無いもの大きな理由の一つでした。 ふっ、人の座るべきベンチにザック置いてるよ・・・。 満員電車でカバンだけ椅子に置いてるのと同じだよね。 あほくさ。 やはり北アはCT50~60%で歩けそう。 新穂高~笠ヶ岳は、8~9hあれば十分往復出来そうです。 この時点では小屋はまだがらがらに空いており、小屋のスタッフさん達は明るく好印象。 小屋も大変に清潔で良い感じです。 ロケーションも素晴らしいですね。 ですから尚更残念で、、、 「空いている日に歩いて、ゆっくり小屋泊を楽しみたかったなぁ」 「営業小屋のある土日の北アは今度こそこれを最後にしよう」 などと考えながら2人の到着を待っておりました。
by yama-nobori
| 2015-09-09 16:37
| 登山 2015
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Comments(2)
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sugishoo at 2015-09-09 21:40
こんばんは、ゆたかさん
5日の土曜日はこんなに晴れての青空でしたか? 皆さんの心掛けが良かったのでしょうね! ここらではもう直きに紅葉も始まるでしょうね。 北アルプスもよろしくお願いします。
1
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yama-nobori at 2015-09-13 23:37
sugishooさん、お返事遅くなってしまいました。
あの土曜日は奇跡的な快晴でした!! 山では標高の低いところでは秋の味覚が、高いところでは既に紅葉が始まりつつあるようです。 まだまだ登りたい山がたくさんあるので効率よくスケジュールを消化したいと思います(^^) 紅葉楽しみだなぁ。
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